エリザベスクィーンを徹底分析

2008年06月21日(土) 20:10

 プロ野球・楽天の野村監督が1453敗という日本の監督最多敗戦タイ記録をマーク、将棋の羽生善治名人が名人戦を制して永世名人となり史上初の「永世6冠」を獲得、ゴルフのタイガー・ウッズが全米オープンに優勝してジャック・二クラス以来2人目の「トリプルグランドスラム」を達成と、記録の話題づくめだった今月16日(全米オープンは日本時間)。姫路競馬の第1レースでは、エリザベスクィーンが03年のデビュー以来足かけ6年で162連敗(勝ち星なし)をマーク、競馬の国内最多連敗記録を更新しました。

 これまでの記録は161連敗。最後は浦和競馬の富田厩舎に籍を置いたハクホークインが86年から92年にかけて作ったもので、こちらは161戦未勝利のまま引退しました。この馬については、田中哲実さんが当サイトにコラムを書いていらっしゃるので、ぜひご一読ください。で、今回はエリザベスクィーンについての考察。地方競馬全国協会のデータベースを元に、この馬の成績を徹底分析してみました。

 同馬は03年6月3日、道営札幌競馬の第6R、距離1000m、牝馬限定のフレッシュチャレンジ(新馬)競走でデビューしました。馬体重は406kg。先日の姫路戦が411kgでしたから、5年たってもほとんど変わっていません。このレースでは12頭立ての6番人気に推されましたが、結果は11着。勝ち馬から3.6秒離された敗戦から、果てしなく長い“連敗街道”を走り始めたのです。

 以来、北海道、佐賀、名古屋、園田の7つの厩舎を行ったり来たりしながら、札幌の他、旭川、門別、佐賀、名古屋、笠松、園田、姫路の競馬場を股にかけ、ほとんど休むことなく走り続けます。03年13戦、04年28戦、05年31戦、06年39戦、07年36戦。そして今回は、今年の15戦目でした。丸6年あまり、1842日間で162回の出走。平均すると11.37日に1回出走したことになります。最も長く休んだ(レースの間隔が開いた)のは、04年11月29日に名古屋競馬場で走った後、翌年1月30日に同競馬場のレースに復帰するまでの61日間。北海道から本州や九州、あるいはその逆の転厩をしたときでも、中1週〜1か月ほど休んだだけで実戦をこなしてきました。162戦の総走行距離は199km+790m。1000m戦に68回出走していますので、思ったほど長くはありませんが、それでも東京から静岡県の藤枝あたりまでの距離に匹敵します。

 手綱を取った騎手は全部で25人。07年2月21日には岩田康誠騎手が騎乗して、勝ち馬から0.3秒(1馬身3/4+ハナ)差の3着になったこともあります。その時も含めて、これまでに6回、1番人気に推されました。そのうちの2回は北海道から佐賀に転厩しての緒戦。佐賀には「道営からの転入馬を狙え」という馬券作戦があるんでしょうか?その時の着順は8、9着。あとの4回は園田のレースで、結果は3着3回と5着1回でした。

 今回、同馬は“惜しくも”2着に敗れ、連敗記録を更新しました。162戦のうち、2着に“健闘”したのはこれが8回目。その中で、勝ち馬から0.2秒(1馬身1/4)差というのは、3番目に小さい着差だったんです。いちばん惜しかったのは今年4月15日の園田でのレース。その時は、タイム差は今回と同じ0.2秒ながら、3/4馬身差の2着でした。これは、同馬が勝ち馬から1馬身未満の差でフィニッシュした唯一のレースとなっています。

 同馬が2着になったレースの勝ち馬は、すべて1番人気の馬。「なんだこりゃ」という馬に負けたのではなく、しっかり1番人気馬の直後に収まって(?)いるんですから、どれも価値のある2着だと思います。

 同馬にとって、兵庫はよほど水が合うようです。2着8回のうち5回までが園田・姫路競馬での実績。しかも、今年1月24日(150戦目)と2月5日(151戦目)、4月15日(157戦目)と29日(158戦目)の2度、2戦連続2着を記録しています。「2度あることは3度ある」とすれば、今回の姫路競馬で2着になったんですから、次走も2着かもしれません。さらに、同馬が2着の時は1番人気の馬が勝つわけですから、次にこの馬が出るときは、1番人気(になりそうな)馬からの馬単1点勝負をオススメします!?

 でも、それって、163連敗必至ということですよね。連敗の日本記録は更新したんですから、もうそろそろ勝ったっていいでしょう。そこで最後に机上の計算を。全162戦の合計出走頭数1612頭から、同馬の着順の合計1101を引くと511。これが、同馬が走った全162戦で同馬に先着を許した馬の数です。そのうち4頭は競走を中止していますので、同馬がこれまでのレースで“抜いた”馬は507頭、1戦平均3.12頭という計算になります。「1レースで平均3頭は抜く」。つまり、8頭立てのレースなら5着、10頭立てのレースでは7着となる可能性が最も高いということです。そうすると、4頭立てのレースなら、かなりの確率で勝てるんじゃないですか?

 エッ、「そんなレースあるか」って。そう、競走除外でもない限り、4頭立てのレースなんてありえませんね。やっぱりエリザベスクィーンもハクホークイン同様、未勝利のまま引退しちゃうんでしょうか?いやいや、同馬を管理する栗林調教師も、先日のレースで騎乗した板野騎手も、まだチャンスはあると見ているようです。たしかに、園田・姫路では2着5回に加え3着9回と、29戦中ほぼ半分のレースで3着以内に来ています。初勝利も夢ではありません。とにかく、無事に走り抜いて、なんとか1勝を挙げてもらいたいものです。

 さて、今週から中央競馬は夏のローカル開催が開幕。私の中央競馬予想は苦戦が続いていますが、福島テレビオープンはクランエンブレムを狙ってみます。一方、ばんえい競馬は古馬一線級による旭川記念。こちらの予想は、ばんえい競馬情報局

 で。ばんえいの重賞予想はただいま2連勝中!どうぞ参考にして“参戦”してください。では、今回はこのへんで。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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