ロイヤルアスコット観戦記

2008年06月24日(火) 23:50

 グランドスタンドが新築されてから初めて、王室主催のロイヤルアスコット開催(6月17日−21日)に赴いた。残念ながら5日間通しで取材出来たわけではなく、実際に現地に行けたのは後半の2日間(20日、21日)のみだったが、これぞ競馬という雰囲気と醍醐味を存分に堪能することが出来た。

 新スタンドの落成前,スタンドの階層によって「横割り」で一般エリアとロイヤルエリアが分かれることになると聞いていたのだが、実際に行ってみるとかつての旧スタンド時代と同様、「縦割り」でしっかりと一般客のエリアとロイヤルエンクロージャーの区分けが行われていた。と言っても、人の流れは非常にスムーズ。今年のロイヤル開催5日間合計の入場人員は、従来のレコードを破る28万7876人だったが、1日で7万人以上を飲み込んだ21日も、パドック、馬券発売、レース観戦、飲食と、大観衆はいささかの混乱もなく競馬場における時間を楽しんでいた。

 供される食事の品質も非常に高かったし、周辺道路の交通整理も効率的だったし、そういう意味ではこれだけ大きなイベントが極めて円滑に運営されていると感じた。

 1つだけ問題があったとすれば、プレスルームの狭小さか。地元英国の競馬メディアに加えて、日頃競馬とは縁のない地元メディアや、ヨーロッパ全域から参集した競馬メディア、更には出走馬を送り込んでいた豪州のメディアもいて、パドック脇と2階ゴール前の2箇所にあるプレスルームは、いずれも芋を洗うような状態だった。ここにもし日本馬の出走があって日本から多数のメディアがやってきたら、パンクするのは明らかで、近い将来にそういう状況になったら、対応をお願いしないといけないだろう。

 レースの面でも、いくつか歴史に残るハイライトがあった。

 1つは、初日のG1キングズスタンドS。エキアーノが優勝し、スペイン調教馬としてロイヤル開催史上初の勝利を挙げたのである。調教師さんにとって、英国で馬を出走させるのもこれが初めて。2週間前にエキアーノを前の持ち主から買った馬主さんは、平地用の馬を持つのはこれが初めてで、従って平地馬初の出走がロイヤルアスコットで、しかもG1を制してしまうという、想像し難い幸運に恵まれたのだった。

 2つめは、3日目のG1ゴールドCで、イエーツが史上2頭目となる3連覇の偉業を達成したこと。前回達成したのは75年から77年にかけて優勝したサガロで、実に31年振りとなる快挙だった。

 イエーツを含め、管理馬が絶好調だったのがエイダン・オブライエンだ。クイーンアンSのハラダサン、セントジェームスパレスSのヘンリーザナヴィゲイター、プリンスオブウェールズSのデュークオブマーマレイドと、なんとG1・4勝含む6勝を挙げて、ロイヤル開催のリーディングトレーナーとなった。

 3つめのハイライトは、最終日の第1Rに組まれた、2歳馬による距離7Fの準重賞チェシェイムSで見られた。このレースを、エリザベス女王が生産・所有するフリーエージェント(父ドクターフォング)が優勝。ロイヤル開催で女王の馬が勝つのは、99年のデュークオブエディンバラSをブループリントが制して以来、9年振り20度目のことだった。

 女王が優勝馬主として表彰台に上がられた時の歓声たるや、まるでクラシックレースかと思わせる大きさだった。

 ちなみに、女王所有の2歳馬がロイヤル開催で勝利を収めたのは、1957年のポールモール以来51年振りとのこと。すなわち、女王としては半世紀振りに超有望な2歳馬に恵まれたわけで、来年はフリーエージェントによるクラシック制覇なるかどうかが、大きな話題となりそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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