ほぼ横並びのスタートから、
岩田康誠の
クロコスミアが楽な手応えでハナに立ち、単騎逃げの形に持ち込んだ。
1000m通過は1分1秒4。
クロコスミアが2番手だった昨年の1分2秒0よりは速いが、馬群は昨年ほど縦長ではない。数字以上に、ゆったりした流れになったということか。
3コーナーで
クロコスミアがリードを3馬身ほどにひろげ、下り坂を生かしてスピードに乗ったまま直線へ。ペースアップしたことで後続の瞬発力を封じ込め、ヨーイドンではない、底力の勝負に持ち込んだ。
このまま逃げ切るかと思われたが、外からジョアン・モレイラの
リスグラシューが猛然と追い込んできた。
ラスト200m地点ではまだ
クロコスミアが前にいたが、勢いの差は歴然としている。
リスグラシューが
クロコスミアをかわし、クビ差でフィニッシュ。
GIで2着が4回あった実力馬が、初めて
JRA・GIで頂点に立った。鞍上のモレイラにとっても、これが初めての
JRA・GI勝利となった。
「いいポジションで、手応えよく進められた。4コーナーで上手く外に出すことできて、そこからの反応がよく、ラスト300mぐらいで勝てると思いました」
道中は中団からやや後方の馬群のなかで、掛かり気味にも見える手応えのまま脚を溜め、最後の爆発力を引き出した。
ラスト3ハロンはメンバー最速の33秒8。これまでも、後方に待機した阪神JF、昨年の
エリザベス女王杯、今年の
ヴィクトリアマイルなどでメンバー最速の末脚を繰り出しているが、今回は、前を5馬身ほどの射程にとらえたところから、弾けた。モレイラが「弾けさせた」と言うべきかもしれない。
2着の
クロコスミアは、単騎で逃げると本当に強い。鞍上のエスコートも完璧だった。
そこから3馬身離れた3着が、昨年の覇者
モズカッチャンだった。道中は好位の馬群のなかを抜群の手応えで進んでいたが、直線で差を詰めることはできなかった。
その直後につけていた
レッドジェノヴァが4着。これら2頭より少し前の外にいた3歳馬
ノームコアは5着だった。
みなそれなりに伸びてはいたのだが、2着の
クロコスミアと同じぐらいの上がりしか使えず、かわし切れなかった。
つまり、
クロコスミアが勝っても不思議ではない流れだった、ということだ。そんななか、1頭だけ別次元の脚を使った
リスグラシューの強さと、それを引き出したモレイラの技術を讃えたい。
(文:島田明宏)
2018/11/11 21:28
岩田を褒めようぜ!