今年の
朝日杯FSに出走する外国産馬は1頭だが、マル外旋風が巻き起こっていた90年代には多くの外国産馬が出走していた。今回の「
朝日杯FS列伝」はそのマル外黄金期から、驚異的なタイムで無敗の2歳王者となった、1997年の
グラスワンダーをお送りする。
■古馬一線級のタイムを叩き出した栗毛の怪物
「最強世代」と呼ぶファンも多い1995年産駒。この世代の2歳王者に輝いたのが、米国産馬の
グラスワンダーだった。
入厩時から素質を高く評価されていた
グラスワンダーは、その通り新馬戦から圧倒的パフォーマンスを見せた。
2歳9月の新馬戦(中山芝1800m)は2番手からの抜け出しで3馬身差、2戦目のアイビーS(東京芝1400m)は後方から一瞬にして前を捕らえて5馬身差。さらに、重賞初挑戦となった
京成杯3歳S(現
京王杯2歳S)も、1.1倍の断然人気に応えて、2番手から楽な抜け出しで6馬身差をつけたのである。
そして迎えた第49回朝日杯3歳S。走るたびに着差を広げてきた
グラスワンダーには、当然というべきか、単勝オッズ1.3倍という圧倒的な支持が集まった。
レースは、宣言通りに
マウントアラタが逃げ、前半800mが45.4秒というハイペースになった。
グラスワンダーは中団の外目につけると、4コーナー手前から外を回って位置を上げ、先頭集団に迫る形で直線へ。
グラスワンダーの動きとともに、場内のどよめきは大きくなった。
直線を向き、先に抜け出したのは
マイネルラヴだった。そこへ鞍上の
的場均騎手(現調教師)のステッキで加速した
グラスワンダーが並ぶ間もなく交わし突き放す。そして場内が興奮に沸くなか、2馬身半差をつけてゴール板を駆け抜けた。
走破タイムの1:33.6は、的場騎手が
リンドシェーバーで記録した1:34.0を更新するレコード。同じ日の同コースで行われた古馬準OPより0.7秒も速く、朝日杯3歳Sでは初めての33秒台に突入し、レースから戻った他の騎手からは「速すぎる」というコメントが続出したほど。そんな価値あるレースの頂点に立ったのが“栗毛の怪物”だった。
的場騎手は「じっくり乗っても差し切ってくれると思っていたので、気楽に走らせた。
ゴーサインが出るまでは走る気があるのかというくらい
リラックスしているが、反応は素早くてすぐ動くんです。今日も素晴らしい時計で、強い勝ち方をしてくれました」と笑顔で勝利騎手インタビューに答えた。
ちなみに、このレースは出走馬15頭のうち外国産馬が11頭を占めたが、2着の
マイネルラヴはのちに
スプリンターズSを勝ち、4着の
アグネスワールドはフランスとイギリスでGIを制している。
その後の
グラスワンダーは故障にも苦しんだが、4歳で外国産馬として初めて
有馬記念(1998年)を勝利するなど、
グランプリ3連覇を成し遂げた。また、
スペシャルウィークに4センチ差で勝利した
有馬記念(1999年)など、同期とのラ
イバル対決でもファンを沸かせ、「最強世代」を盛り上げたのである。
2018/12/15 7:53
スペシャルウイーク、グラスワンダー、エルコンドルパサー、セイウンスカイ、サイレンススズカ、ステイゴールド、キングヘイロー、あの時代の競馬はホント熱かったなあ。それぞれに個性があってそれぞれに物語があった。
圧倒的な強者が君臨するより、ライバルがしのぎを削る時代のほうが観ていて楽しい。