【ホープフルS】未完の大器オーソクレースか激トレこなしたシュヴァリエローズか/POGマル秘週報

東京スポーツ

2020年12月23日(水) 19:52

母はGI2勝馬マリアライトのオーソクレース(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規

 2020年最後の2歳最高峰決戦・第37回ホープフルS(26日=中山芝内2000メートル)をターゲットにした「POGマル秘週報」は、東西記者からの豪華2本立てでお届けする。

 ★関東(立川敬太)=東からはオーソクレースを取り上げる。札幌のデビュー戦、続くアイビーSともに最速上がりを駆使しての差し切り。しかも1、2回札幌開催の芝1800メートル戦で33秒台の上がりを使ったのは古馬を含めてもオーソクレースの他に3頭だけ。

 そしてアイビーS2着ラーゴムは続く京都2歳Sでも2着、4着アドマイヤハダルエリカ賞勝ちと、時間の経過がオーソクレースの2戦の価値をさらに高めている。

 一方で2戦ともスタートでは出遅れ。まだ幼さを残し、課題が山積みにも映る現状なのだが、久保田調教師はそう深刻には捉えていない。

「ゲートも出るには出ているんですよ。ただ、他のことに気を取られるというか、周りが気になって(出遅れて)しまうんですね。でも、だんだんと競馬を覚えていけば解消すると思っていますから、特に練習はしていません。だいぶ走ることにも前向きになってきましたから。むしろ、未知な部分が多い中で結果を出せていることを評価しています」

 無理に馬を追い込むようなことはせず、ゆっくりと肉体と精神が熟すのを待っている段階。そんな中での連勝が「器」の大きさを示していると言えようか。

 さらに忘れてならないのがマリアライトの初仔という血統背景だ。母は3歳1月の遅めのデビューとあってクラシックとは無縁。4歳秋のエリザベス女王杯が初タイトル奪取。そして翌年の宝塚記念ドゥラメンテキタサンブラックらを抑えて優勝した「おくての名牝」だった。

マリアライトは新馬戦こそ強かったけど、馬体の成長が追いつかず、出世に時間がかかりましたからね。オーソクレースにしても、まだまだの状態。決して2歳の早い時期からって感じの馬ではないんです。今はまだ能力だけで走っている段階ですから」

 あらゆる面でまだ成長段階では、2歳最高峰決戦での勝ち負けはやはり難しい?

「もちろん、来年に向けてが一番なんですけどね。ここ2戦で戦ってきた相手よりもう一段上になって、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。強い相手に対して、本気で走った時にどうなるのかって楽しみはあります。もしここもクリアしてくれるようなら、来年はさらに楽しみになりますからね」

「未完の大器」オーソクレースの真の“器”の大きさを知らしめる瞬間は早々に訪れるかもしれない。

 ★関西(難波田忠雄)=2017年にGIへ昇格して今年が4回目となるホープフルS。昨年の勝ち馬コントレイルは無敗でクラシック3冠を達成、一昨年のサートゥルナーリア皐月賞を制するなど、朝日杯FSよりもクラシックへの“直結度”は高い。各陣営がエース級を投入してくる見どころの多い一戦で今年、注目したいのは昇格元年の覇者タイムフライヤーや、サートゥルナーリアと同じく“縁起のいい”萩Sを快勝したシュヴァリエローズだ。

 清水久厩舎といえば、希代の名馬キタサンブラックの「坂路3本乗り」で有名だろう。とにかくビシビシ鍛えて強くするのがモットー。シュヴァリエローズもその例に漏れず、デビュー当初から「週2本の追い切り」をこなしてきた。

「デビュー前はさすがにピリピリするところがあったけど、今は落ち着きが出てきましたね」

 担当の久保助手がこう振り返るように、入厩当初は週2本のハードトレに苦しがるところを見せてきたが、今ではその時期を乗り越え、厳しい調教メニューを難なくこなせるほどの心身の成長を遂げている。

 デビュー2戦目の新潟2歳Sは出遅れたうえに、馬場の悪い最内を通った影響もあって5着に敗れたが、萩Sでは好スタートからスッと番手へつけ、最後まで長くいい脚を使って押し切ったように、ハード調教の効果が徐々に表れつつある。

新潟2歳Sの前は夏バテ気味でピリッとしなかったし、新馬戦で勝っているとはいえ、マイルも忙しい感じがあった。今回はコーナー4つの競馬になりますけど、今は調教でも手前をしっかり替えてくれて、乗りづらさはまったくないので大丈夫。萩Sはスタートも速かったですし、長くいい脚を使えるのがこの馬の最大の武器。持ち味を生かしやすい舞台だと思いますよ」と久保助手はコース替わりは歓迎といった口ぶりだ。

 さすがにGI7勝を挙げたキタサンブラック級の超ハード調教はまだ課してはいない。それでもシュヴァリエローズが課されてきた調教は並の2歳馬には耐えられないようなメニュー。それを乗り越えたとなれば、萩Sからわずか2か月弱とはいえ、相当な心身の進化が見込める。

 来年のクラシック戦線を見据える意味でも、シュヴァリエローズがどれだけパフォーマンスを上げてくるのかに注目してほしい。

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