【ヴィクトリアM】津村14番人気テンハッピーローズでG1初制覇 デビュー21年目「いつか勝ちたい勝ちたいと思い続け」

デイリースポーツ

2024年05月13日(月) 06:00

 テンハッピーローズでヴィクトリアマイルを制した津村

 「ヴィクトリアマイル・G1」(12日、東京)

 強い風が吹く府中の杜で、大波乱の嵐が巻き起こった。立役者はブービー14番人気のテンハッピーローズ。中団からレースを運ぶと直線で豪快に突き抜け、重賞初勝利をG1で飾った。勝利に導いた津村も騎手生活21年目で悲願のG1初勝利。2着には4番人気のフィアスプライド、3着には1番人気のマスクトディーヴァが入った。2番人気のナミュールは8着に終わった。

 テンハッピーローズの馬上で、津村の右腕がスタンドに向けて高く突き上がった。デビュー21年目、G1騎乗48回目にしてつかんだ栄冠。何度も相棒の首筋を優しくたたき、騎手仲間に祝福された。場内からは万雷の拍手。「いつか勝ちたい勝ちたいと思い続けて。一番大きい東京で勝てて、最高の瞬間。涙は出ないかと思っていたけど、皆さんの声援が聞こえて高まりました」と、込み上げてくるものを抑え切れなかった。

 直線はブービー14番人気の馬とは思えない迫力だった。4コーナーを回って各馬が一斉に追いだす中でも持ったまま。残り2Fまで待ち、ゴーサインを出すと馬は矢のように反応した。「手応えは抜群で先頭をとらえられそうだと。そこから必死に追いました。先頭に立ってからは誰も来ないでくれと思って」。無我夢中でリードした津村の思いに馬も応えた。

 G1では悔しい思いを続けてきた。カレンブーケドールとのコンビでは19年オークス秋華賞ジャパンCと2着。苦労人と評されがちだが「自分の苦労が足りなかっただけ」と謙遜する。「いつかはG1を勝ちたい」-。あきらめない思いで日々努力を重ねるなか、ようやく勝利にたどり着いた。その原動力は家族。一番に喜びを伝えたい妻、小学5年の長男、同3年の次男は「きょうはサッカー(Jリーグ)の試合を観に行っている。家に帰ったら抱きしめたい」と表情を緩めた。

 1400メートルが主戦場だったが、マイルで戦えるよう調教してきた厩舎の努力も見逃せない。高柳大師は直線で「声を出して応援していて、信じていたけど、本当に勝ってくれるとは思っていなかったので、最後は黙ってしまいました」と笑いながら、「良い仕事をしてくれた津村騎手には感謝しかない」と好騎乗をたたえた。今後の予定は「冷静になってからオーナーと相談したい」。6歳の春、満開を迎えた遅咲きのニューヒロイン。携わる全ての人に今後も幸せを運んでくれそうだ。

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