三浦皇成 大ケガ乗り越えつかんだ東京ダービーV

スポニチ

2024年06月07日(金) 05:05

<東京ダービー>レースを制した三浦騎乗のラムジェット(撮影・河野 光希)

 【競馬人生劇場・平松さとし】三浦皇成騎手が落馬で大ケガを負ったのは16年8月。札幌競馬場での出来事だった。

 「馬が骨折してバランスを崩しました。落ちるのは覚悟したので、上手に転がれました。ただ、後続馬と接触してしまいました」

 当然、痛みを感じた。それでもアドレナリンが出ていたせいか「メインレースには乗りたい」と思っていた。

 ところが…。

 「時間がたつにつれ、痛みがひどくなり、救急車に乗った頃には呼吸すら厳しくなりました」

 病院に着く前に「メインレースどころではない」ことに気付いた。

 「脇からチューブを入れて肺を膨らませたら呼吸ができるようになったけど、そこで初めて下半身の感覚がないことに気付きました」

 骨盤が折れていた。肋骨も9本骨折。そのうち3本が肺を破っていた。

 痛みで眠れない日々が続いた。3度の手術をして、北海道の病院から茨城の家の近くへ転院できるまで約1カ月を要した。

 「肺に負担をかけられないので飛行機には乗れず、フェリーで移動しました。その間を含め、しばらく車椅子での生活が続きました」

 転院後も手術。「毎週末、自分抜きで競馬が行われているのを見ると、精神的な苦痛も大きくなった」

 事故から約3カ月を経て松葉づえを渡された。それを頼りにしながらも上手に立てなかった時には「騎手復帰は無理かも…」と弱音が口をついた。

 その時、妻ほしのあきさんに言われた。「やるだけやってダメなら仕方ないよ」

 「何もやらないうちに弱音を吐いている自分が恥ずかしくなりました」

 その後はどれだけ苦しくてもリハビリに励むことができた。結果、5度の手術を乗り越え、ちょうど1年後の17年8月、ターフに戻って来た。

 そんな三浦騎手が5日に行われた東京ダービー(Jpn1)をラムジェットに騎乗して優勝した。悪夢から復活して約7年後に現れたダート界の新星との今後の活躍に期待したい。 (フリーライター)

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