【船橋競馬】ありがとう森泰斗 一日4勝、通算4448勝 ラストは2着「競馬は甘くないな」

スポニチ

2024年11月29日(金) 21:22

最終レース後、騎手仲間から胴上げされる森(撮影・郡司 修)

 引退当日を迎えた森泰斗騎手(43=船橋)が29日、ラストデーに1日4勝をマーク。最後までファンを魅了したまま、地方通算2万8333戦目でムチを置いた。

 船橋競馬12Rはその名も「ありがとう!森泰斗騎手」。森はラップランド(セン5=矢内博)で挑み、道中は3番手を追走。3角で早々とムチが入るが、ここからもたせるのが森の真骨頂。直線で先頭に立ち、あとひと踏ん張り、と思われたが、外からグロリアンズタイムにかわされ2着に終わった。

 ゴール後、1角過ぎまで流す間に、勝った町田直の肩をポンと叩いた森。3着の中越には握手を求めた。その後、枠場へ直行せず、スタンド前へと馬を導き、ヘルメットを取って一礼。ファンへの最後のあいさつを行った。

 レース後、森は「勝ちたかったな。競馬は甘くないな」と悔しがった。だが、最終日に4勝を積み重ねた名手に観衆は大きな拍手を送った。そしてゴール前で騎手仲間に胴上げされ、3度宙を舞った。

 船橋1Rをワンラヴ(牝6=佐藤博)、同4Rをタカラバディウス(牝3=斉藤敏)、同5Rをオマタセシマシタ(牝4=川島一)、同7Rをビレッジスティール(牝4=新井清)で勝ち、これが4448勝目。8戦4勝。見事なラストデーをファンに披露した。

 森の電撃引退をライバルも惜しんだ。

 矢野貴之は「北関東が廃止になって同じ時期に南関に来たし、仲間意識があった。それだけに寂しさがある。キャプテンキングで森さんのヒガシウィルウィンと戦えたのが本当に楽しかった」と語った。

 本橋孝太は「すさまじい努力を見てきたし“格好いいなこの人”と、ずっと思っていた。言葉を失うくらいショックで本当は辞めてほしくないが、想像以上の疲れがあったのだと思う」と、常に手本となってきた男との別れを寂しがった。

 この日の5Rでは管理馬オマタセシマシタに森を乗せ、見事に1着をつかんだ川島正一師は「体がきついのは知っていた。あとはタイミングだったと思う。でも、もったいないよね」と語った。

 もったいない…。そう思われている時に身を引くことこそが森の美学なのだろう。足利競馬から騎手人生が始まり、宇都宮、そして船橋。地方競馬のつらかった頃をよく知る男は最高の騎手のまま、静かにムチを置いた。

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