◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断
ひな菊娘は目で殺す。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。先週の
大阪杯は満点評価の
ベラジオオペラが勝利を飾った。「第85回
桜花賞」(13日、阪神)は“大家のひな菊”
ビップデイジーをトップ指名した。達眼先生の心を奪ったのは弓矢で射すくめるような強烈な目力。NHK大河ドラマ「べらぼう」にも頻繁に出てくる江戸・花街の地口(ダジャレ)、俗謡で馬体を解説するのでござりんす。
京都三条糸屋の娘
姉は十八、妹は十五
諸国大名、弓矢で殺す
糸屋の娘は目で殺す
こんな古い俗謡がNHK大河ドラマ「べらぼう」に登場しました。安田顕演じる平賀源内が小芝風花扮する花魁(おいらん)・花の井(瀬川)のまなざしに心奪われ、「諸国大名、弓矢で殺す 松葉の瀬川は目で殺す…てなとこかな」とささやく場面。この俗謡は源内の作ともいわれるため本人のシャレとして用いたようです。花街の粋とはとんと無縁の野暮(やぼ)天神、馬一筋の私を悩殺したのは牝馬のまなざし。
桜花賞の
ビップデイジー、和名に直せば「大家のひな菊」の瞳に心奪われたのでありんす。
目力が非常に強い。ちょっと大げさに言えば、諸国大名が弓矢で射すくめるような強烈なまなざし。目は心の鏡といいます。ひな菊の瞳が映し出すのは強い気性。ハミ受けの強さにも気の強さが表れていますが、今回はとても落ちついている。阪神JF時には力んで持ち上げていた尾を自然に流しています。
3歳の春を人間の年齢に置き換えれば京都三条糸屋の娘と同じ、育ち盛りの10代半ば。ひな菊娘も阪神JF時から着実に成長しました。特に上腕の筋肉が厚みを増しています。前肢上部にあたるこの部位の筋力アップで前肢の安定感がより増してきた。馬体重440キロ足らずの小柄な牝馬でも腹周りはふっくら。
桜花賞トライアルを使われても体を維持できています。
父
サトノダイヤモンドはゆったりと伸びやかなステイヤー体形でしたが、娘は少し胴が詰まり気味のマイルから2000メートルが向きそうな体形。距離適性は
オークスよりも
桜花賞。体重があまりない分、輸送に時間がかからない地元戦のアドバンテージも大きい。
京都三条糸屋の娘…の俗謡は「起承転結」の例文として引用されるそうです。競馬に引用すれば起承転結は…。ゲートを出て流れに乗る「起」、道中折り合って脚をしっかりためる「承」、3、4角から直線に向いて手前を転換する「転」、ラストスパートの「結」。ひな菊娘は気性が強い分、道中しっかり折り合って脚をためるのが難しい。「承」が課題。前走
チューリップ賞(3着)は周りが控えたため馬群を壁にできず、江戸・花街のダジャレでいえば仕方中橋(仕方なかった)。テンが速くなりそうな本番では馬群の壁をつくりやすい内めの黒2枠が引ければありがた山の寒ガラス(ありがたい)。
いささか酔狂が過ぎた馬体解説でありんすが、「結」はこれしか中橋(これしかない)。ひな菊娘は目で殺す…てなとこかな。 (NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。
JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。
2025/4/8 7:25
それなりにやばいのが来た感
来週のクロワデュノールがどんな怪文書を書くかそわそわする