2001年12月19日(水) 00:00
香港国際競走における日本馬の活躍は、見事なものであった。
レ−ス前日の朝まで現地で取材をしていて、知り合いの関係者や記者に会うだびに「今年の日本馬は強そうだな」と言われ、中には「全部持っていくのじゃないか」と冗談まじりに予測する人もいたのだが、正直に言うと4つのうち2つ勝てれば大満足というのが、戦前の私の予測だった。
弱気の根拠はいくつかあった。
各国のハンディキャッパ−や記者の話を総合すると、メンバ−に恵まれたのがヴァ−ズのステイゴ−ルドで、ドバイのレ−スを再現出来れば楽勝で、前走4着だったJCのレ−スが出来ればまず勝てるというのが,衆目の一致することろだった。だが、その肝心のステイゴ−ルドがいつもいつも「普段の力が出せる」タイプの馬ではないため、ここで確実に1勝を計算する気に、私はなれなかったのである。
ヴァ−ズ同様に、さほどのメンバ−ではないと言われていたのがスプリントで、ここはうまくすれば日本馬で行けると見ていた。一方で、好メンバ−が集まってタフな競馬になると見られていたのがマイルとカップで、両レ−スの日本代表も相当な強豪だったが、一筋縄ではいかないと見ていたのだ。
よって、「2つ勝てれば万々歳」の気持ちだったのである。
それが、4つの国際競走のうち3つを制覇し,G1に限っては、タフな2レ−スを含めてスウィ−プしてしまったのだ。4レ−スの総賞金5400万香港ドルのうち、実に半分近い2620万香港ドル(約4億2.863万円)を日本勢は独り占めしてしまったのだから、素直に脱帽した上で、予想が外れたことを忘れての狂気乱舞となった次第である。
宴が終わった今、改めて振り返ってみると、今回の快挙からいくつかのファクタ−があぶりだされてくる。
まず、勝った3頭がいずれも栗東調教馬であったのに対し、1番人気を裏切り2ケタ着順に敗れた2頭はいずれも美浦調教馬であった。昨今、日本国内の東低西高が言われて久しいが、極論をするのであれば、西のレベルは世界で戦えるものであるのに対し、東は勝負にならないというのが、香港国際競走の結果だった。
また、勝った3頭の日本調教馬のうち、ステイゴ−ルドは生粋の日本産馬であるが、残る2頭はアメリカ産馬であった。それも、せり市場をくぐって日本に入ってきた馬ではなく、プライヴェ−トな購買によって日本にやってきたという共通項がある2頭だった。現地との密接なコネクションを活かし、機会を逃さず金の卵を探し出した、関係者の大勝利である。ステイゴ−ルドは引退するが、残る2頭はぜひ来年も海外での活躍を期待したい。
だが、気がつけばドバイへ行くクロフネもアメリカ産馬であり、結局日本産馬で来年海外雄飛を宣言しているのはジャングルポケット1頭だけだ。
日本の競馬と馬産のレベルは着実に急速に進歩しているが、こうして考えてみると、まだ上昇の余地を残した部分もあることに、気付かされるのである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。