香港国際競走トライアルレースの外国馬枠

2009年09月30日(水) 11:59

 1年の掉尾に行われる国際イベントとして定着した香港国際競走が、今年も12月13日にシャティン競馬場で行われるが、施行される4つの国際競走のうち、2000mのG1カップ、1600mのG1マイル、1200mのG1スプリントへ向けて地元で開催されるトライアルレースが、今年から外国馬にも開放されることになった。主催する香港ジョッキークラブから、9月22日付けで発表されたプレスリリースによって明らかになったものだ。

 具体的には、11月15日に行われるインターナショナル・カップ・トライアル(香港G2、2000m)、22日に行われるインターナショナル・マイル・トライアル(香港G2、1600m)、同じく22日に行われるインターナショナル・スプリント・トライアル(香港G2、1200m)の3レースにおいて、それぞれ4頭を上限として外国馬枠が設けられることになったのだ。

 香港ではこれまで、外国馬の出走は、年間で6レース施行されている国際G1(12月の国際競走4レースと、4月のクイーンエリザベス2世Cとチャンピオンズマイル)に限られていたが、わずかではあるが制限緩和の方向に動くわけである。

 外国馬に開放される3レースのうち、本番へ向けた前哨戦として最も機能することになるのが、インターナショナル・スプリント・トライアルであろう。

 本番の香港スプリントは、グローバルスプリントチャレンジ(GSC)の最終戦として行われるレースだ。GSCは英国ラウンドが終了した後、第6戦のスプリンターズS(10月4日)、第7戦のパティナックファームクラシック(11月7日)、そして第8戦の香港スプリントと、日程上は3レースが、日本式に言うところの中4週の間隔できれいに並べられているが、実際には、日本→豪州→香港と「はしご」して3戦するのは困難。地域を鑑みれば、パティナックファームクラシックの関係者には申し訳ないが、スプリンターズSから香港スプリントというのが、現実的なローテーションであろう。

 なおかつ、パティナックファームクラシックが行われる豪州では、1月31日にGSC初戦のライトニングSが行われていて、今年の優勝馬はシーニックブラストであった。ご承知のように、GSCには100万ドルのボーナスが設定されていて、これを手にするには「3カ国でG1レースを3勝以上」が条件。すなわち、ライトニングSの後、英国のG1キングズスタンドSを制しているシーニックブラストが、100万ドルのボーナスを手にするには、日本のスプリンターズSか香港の香港スプリントを勝つ必要があり、逆に今さらパティナックファームクラシックを勝っても、ボーナス獲得へ向けて前進することにはならないのだ。つまりはここでも、スプリンターズSから香港スプリントというローテーションが浮上してくるわけである。

 ところが、スプリンターズSと香港スプリントの間にある2か月を超える隔たりは、間隔を空けて使った方が良い馬ならともかく、一般的には「開きすぎ」。11月22日のインターナショナル・スプリント・トライアルが国際化されるなら、「ここでひと叩き」と目論む陣営が必ず出てくるはずだ。実際に、シーニックブラストの陣営も、スプリンターズSの後は早めに香港入りし、ここを使うことを考慮していると伝えられている。

 11月15日のインターナショナル・カップ・トライアルと、22日のインターナショナル・マイル・トライアルは、これが益々「日本パッシング」を加速することになりはしないかと、気懸かりである。

 そうでなくても近年、ジャパンCを頂点とした日本のオータム・インターナショナル・シリーズにとって、外国場誘致の強力なライバルとなっているのが12月の香港国際競走だ。

 日本の秋のGIも、既に前哨戦も含めて国際化されているが、日本で2戦以上するつもりで参戦してくる馬は殆んどいないのが現実で、国際化されるカップとマイルの前哨戦が、外国馬招致にどれだけ寄与するかは不明である。だが、欧州のシーズンが終了し、「次の目標は香港」、もしくは「北米のBCを使って、次は香港」とのコメントが有力馬の陣営から聞こえてくるのを、忸怩たる思いで聞いている日本のファンにとっても、勧誘に努めている欧米のJRA駐在員にとっても、心配の種が増えたことは間違いなさそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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