欧州最高のイヤリングセール

2009年10月13日(火) 00:59

 欧州最高のイヤリングセール「タタソールズ・オクトーバーセール・ブック1」が、10月6日から8日にかけて英国のニューマーケットで行われた。

 先月ケンタッキーで開催された北米最大の1歳馬市場「キーンランド・セプテンバーセール」が、クラッシュとも言える暴落に終わっただけに、業界全体が大きな憂慮の中で迎えた市場だったが、総売り上げは前年比7.9%アップの5,376万ギニー、平均価格が前年比6.2%ダウンの113,907ギニー、中間価格が前年比5.9%ダウンの80,000ギニー、前年22.9%だったが今年は22.5%と、まずは関係者一同がほっと胸をなでおろす結果となった。

 今年の「オクトーバーセール・ブック1」は、昨年よりも10%ほど上場頭数が多かったのだが、それでも減額は免れないと見られていた総売り上げがプラスに転じ、平均価格・中間価格ともわずかな下落にとどまった。更に、バイバック(売れ残り)は前年より少なくなるという結果は、事前の予測を遥かに上回る良好なものというのが、関係者の反応である。

 開催を前にして業界筋が殊更に警戒していたのが、トップエンドのマーケットだった。こういう経済状況下だけに、採算を度外視した派手な争奪戦は影をひそめ、高い価格帯の伸び悩みが市場全体の市況の脚を引っ張ることになるのではないかと、危惧されていたのである。ところが、最高価格は70万ギニーと、昨年に引き続いて「ミリオンホース、なし」に終わったものの、50万ギニー以上で取引された馬の数は、前年の7頭から1頭増えて8頭になったから、トップエンドの需要も充分にあり、結果として関係者の多くが満足する数字が残ることになった。

 その、70万ドルで購買された最高価格馬は、最終日の8日にヒップナンバー545番として登場した父オアシスドリームの牡馬。おじにドイツの古馬チャンピオン・クトゥブがいるゴージャスな若駒で、クールモアの代理人デミ・オバーン氏が購買した。同馬は、アイルランドのチャンピオントレーナーであるエイダン・オブライエン厩舎に行くことになる模様だ。

 今年の「オクトーバーセール・ブック1」には、日本からも5組のバイヤーが参加。このうち1組は、残念ながら値段が折り合わずに購買がかなわなかったが、4組がそれぞれ1頭ずつ希望の馬を入手され、合計で4頭が日本へ行くことになった。昨年のこの市場は日本人購買がゼロだったから、大きな前進である。日本も相変わらず厳しい経済環境に取り巻かれているが、円とポンドの為替レートが、昨年の同じ時期と比較して20%ほど円高に振れていることが、購買意欲を促進した一因かもしれない。

 日本行きの最高値となったのが、24万ギニーで購買された上場番号49番の牡馬。血統と実績から欧州型種牡馬の典型のように見られながら、実はキリッとした子を多く出しているダラカニの産駒である。本馬も、良い瞬発力を持っていそうな馬で、兄に重賞2勝馬がいる血統も悪くなく、大きな期待をかけたい逸材である。

 英国ダービー馬モティヴェイターの2世代目の産駒となるのが、上場番号134番の牝馬だ。モティヴェイターもまた、欧州系種牡馬の中では体の柔らかそうな子を多く出しており、必ず日本でも走る子を出すはずと見ている種牡馬である。

 上場番号224番の牡馬は、06年の仏2000ギニー勝ち馬オーシールールズの初年度産駒だ。バランスの良い好馬体に加えて、ダンジグ、アルザオ、コジーン、ミスワキなど、日本の競馬に向いた馬たちの名が配合表にずらりと並ぶ血統も魅力の1頭である。逆に、おじに欧州チャンピオンのダルシャーン、おばにG1ヴェルメイユ賞勝ち馬ダララ、その娘に今年のヨークシャーオークスを含めてG1・2勝のダーレミがいるという、ばりばりの欧州血統を保持するのが、上場番号332番の牡馬(父ガリレオ)だ。2年後の10月第1週目にロンシャンを走っていても驚かぬ馬である。

 各馬順調にデビューの日を迎えて欲しいものだ。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す