主要メンバーが固まりつつあるブリーダーズC

2010年10月13日(水) 11:10

 11月5日・6日の両日、ケンタッキー州のチャーチルダウンズで開催されるブリーダーズCの前哨戦がほぼ終了し、それぞれのレースの主要メンバーが固まりつつある。このコラムでは、全14レースの中から日本のファンにとって特に気になるレースの展望を、週を追ってお届けしていきたい。

 まず今週は、6日に行われる芝12Fのターフに出てくる有力馬をご紹介したい。

 芝のレースだけに、各ブックメーカーが上位人気に推しているのは、欧州調教馬だ。

 中でも、各社横並びで1番人気に支持しているのが、ワークフォース(牡3、父キングズベスト)である。御存知、10月3日にロンシャンで行なわれたG1凱旋門賞で、ナカヤマフェスタの追撃を頭差退けて優勝した、今季の欧州12F路線の最強馬だ。

 凱旋門賞の直後、来季の現役続行を匂わせたワークフォース陣営だったが、レース翌日になって「BCターフを使う可能性あり」と発表。大手のラドブロークスが2.75倍を掲げたのを最少オッズとして、各社前売りの本命に掲げることになった。

 英ダービーを圧勝した時には高速馬場を、凱旋門賞を制した際には道悪を克服し、条件を問わず力を発揮出来ることを示したワークフォース。今季ここまで4戦しかしておらず、シーズン末を迎えてなお充分に余力を残しているはずで、チャーチルダウンズのきついコーナーさえハンドリング出来れば、優勝への最短距離にいることは間違いなさそうだ。

 各社4倍から6倍のオッズで2番人気に推しているのが、フェイムアンドグローリー(牡4、父モンジュー)である。

 凱旋門賞組では、昨年よりは1つだけ上の着順を得たものの、人気に応えることが出来なかったという点では前年と変わらぬ結果に終わった同馬。レース後の馬の様子を確認していたエイダン・オブライエン師から、BCターフ出走表明がでたのが、凱旋門賞からちょうど1週間が経過した10日(日曜日)のことだった。

 凱旋門賞への向けてのこのコラムでも再三触れたが、8月8日のG2ロイヤルホイップSを使った後、凱旋門賞前の最終プレップとして使うとされていた愛チャンピオンSとフォワ賞をいずれも回避。原因について陣営から明確な説明はなかったものの、一頓挫あったことは明らかで、凱旋門賞当日の同馬が100%の状態であったかどうかには疑問が残る。逆に言えば、凱旋門賞を叩かれて上昇している可能性があり、凱旋門賞でワークフォースに付けられた5馬身の差を逆転する余地は残していると考えるべきだろう。

 10月2日にベルモントパークで行なわれたG1ターフクラシックで、日の出の勢いにあった3歳の若武者パディーオプラドを貫禄で封じ込め、3度目のG1制覇を果たしたウィンチェスター(牡5、父シアトリカル)が、オッズ6倍から11倍の3番手評価を受け、地元アメリカを代表する形になっている。ここ10戦連続で入着を外していないという堅実派で、馬場状態も問わない万能型だけに、BCでも大崩れはなさそう。

 ターフクラシックではウィンチェスターの後塵を拝したものの、古馬の一戦級とも充分に戦えることを証明したパディーオプラド(牡3、父エルプラド)が、各社8倍から11倍のオッズで4番手評価。2歳時から芝を使われていた馬だが、3歳春にはダートでも走り、ケンタッキーダービーで3着になった実力馬である。その後再び芝に戻り、G1セクレタリアトSを含めて3連勝。更に成長の余地を残しており、今後が楽しみな存在と言えそうだ。

 5番手以下には、再び欧州勢の名が並んでいる。

 8月にアーリントンミリオンを制してG1初制覇を果たしたドビュッシー(牡4、父ダイアシス)が、9倍から11倍のオッズで5番手評価で、9月のG1セントレジャーで重賞初制覇を果たしたアークティックコスモス(牡3、父ノースライト)が9倍から13倍で6番手評価となっている。

 これに続くのが、11倍から15倍のオッズで7番手評価となっているデンジャラスミッジ(牡4、父ライオンハート)だ。9月17日にニューバリーで行なわれたG3アークトライアルSで重賞初制覇を果たした、古馬の上がり馬である。ただし、デンジャラスミッジにはJC参戦の噂もあり、日本のファンとしてはBCをスキップして日本行きを選択して欲しいものだ。

 北米における古馬の上がり馬が、10月2日に西海岸で行なわれたG1CLハーシュターフCSでG1初制覇を飾ったチャンプペガサス(牡4、父フサイチペガサス)だ。古馬ながらここがデビュー8戦めとキャリアが浅く、まだまだ良くなりそうな同馬が、13倍から20倍のオッズで8番手評価となっている。

 使ってくればワークフォース中心のレースになることは間違いなく、この馬が良い競馬をすれば、凱旋門賞で僅差の2着となったナカヤマフェスタの強さも再評価されることになるはずだ。一方、ワークフォースが情けない競馬をすると、凱旋門賞のフォームに疑問が投げかけられることにもなりかねず、下手な競馬はして欲しくないというのが、日本のファンの真情であろう。

合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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