週刊サラブレッドレーシングポスト

2002年10月29日(火) 15:13

 熱戦が続いたブリーダーズC(10月26日、アーリントンパーク)。勝馬の多くが来季も現役にとどまることを表明しているように、今後への余韻を残し来季への期待を増幅させる結果が多かったが、中でも、牡馬牝馬の双方で誕生した無敗の2歳チャンピオンは、ともに来年春が待ち遠しい逸材である。

 ジュヴェナイルフィリーズを制して4戦4勝。緒戦のメイドンを勝って以降の3戦がすべてG1というストームフラッグフライングは、母が95年のBCジュヴェナイルフィリーズ勝馬で、祖母が88年のBCディスタフ勝馬という飛び切りの良血馬。BC3世代制覇は、もちろん史上初の快挙である。

 楽勝続きだったここまでの3戦と違い、ここは大苦戦。好位追走から直線で脚を伸ばそうとしたものの、中団から追い込んできた2番人気のコンポージュアの脚色が良く、直線半ばではコンポージュアが半馬身は前に出て、スタンドを埋めたほとんどのファンは『コンポージュア優勝』と思ったものだ。ところが、そこからストームフラッグフライングがファイトバック。2歳牝馬とは思えぬ勝負への執念を発揮して、半馬身抜き返したところがゴールだった。

 鞍上のJ・ヴェラスケスによると「馬がまだまだ子供」。血統的にもこれから充実するタイプで、来季にどんな成長振りを見せるか見ものだ。状況次第では、牡馬に互してケンタッキーダービー挑戦も視野に入っているとのことだ。

 ジュヴェナイルを制して4戦4勝のヴィンディケーションも、無敗で3歳3冠を制した父シアトルスルーの再来とまで言われている大物である。昨年8月のファシグティプトン・サラトガ・イヤリングセールで、215万ドルという市場5番目の高値で購買された期待馬だが、実はこのセールの際、獣医検査の結果、球節にわずかな問題があることが発覚。レントゲンを見たある獣医は購買をやめるよう進言し、居合わせたある大物調教師にも「これは競走馬にならないかもしれない」と言われながら、馬体の良さに惚れ込んだ馬主の一存で購入。そういう意味で、Vindication(嫌疑を張らず、自己の正当性を証明する、の意)という馬名が付けられたという逸話が残っている。

 実は、ヴィンディケーションの1つ下の弟(父シルヴァーデピューティ)は、現在日本に居る。今年のキーンランド・セプテンバーセールに上場されたところ、25万ドルで日本人バイヤーに購買されたもので、当然日本でのデビューが予定されている。今だったらとてもこんな値段では買えないはずで、最高の掘り出し物と言えるだろう。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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