セレクションセール

2011年07月20日(水) 18:00

 今年度の1歳市場がいよいよ始まった。HBA日高軽種馬農協主催の「セレクションセール」が新ひだか町静内にある北海道市場を会場に7月18日と19日の2日間の日程で開催された。

 今年は上場申し込みの少なかった当歳市場を取りやめ、1歳市場を2日間開催する英断に踏み切った。

 102頭が上場されたものの23頭しか落札されず、売却率22.5%に終わった昨年の教訓を生かした形だが、結果はかなり厳しいものになったと言わざるを得ない。

 2日間を通じて上場された頭数は360頭(前年比115頭増)、落札は201頭(同60頭)、売却率は前年比1.72%減の55.83%とまずまずの数字だが、売上げ総額は18億4317万円(税込み)。
落札馬1頭あたりの平均価格は前年の1086万6383円から大きく下落し、ついに1000万円を割り込んで917万円となった。-169万6383円である。

場内の様子

 初日と2日目とではやや明暗を分けた。初日は181頭が上場され、109頭が落札された。売却率は6割のラインを確保し、60.22%。総額10億5871万5000円を売り上げた。ただし、平均価格はこの時点ですでに971万2982円と前年より115万3401円下回った。

 2日間ほぼ同数(190頭、191頭)が上場予定であったことから、2日目も初日並みの数字を残せたら売り上げは20億円の大台を確保できたかも知れない。しかし、初日に予定の馬を落札できた購買者は2日目になると市場に足を運ばなくなる。

 逆に初日をパスし2日目だけ参加する購買者がいなかったわけではないとは思うが、明らかに初日と2日目とではムードが変わってしまっていた。

 2日目は179頭中92頭が落札され、7億8445万5000円を売り上げた。平均価格は852万6685円。2日目だけを見るなら、実に平均価格は前年よりも約234万円もの落ち込みとなった。また売却率も51.40%で、初日と比較すると9%近い下落である。

 昨年は税込み2000万円を超える落札馬が9頭いたものの、今年は3頭にとどまり、こうしたところにも全体的に価格が下がる傾向にあることが窺える。

 2日間を通じての最高価格馬は初日に登場した145番「プリンス」(牡鹿毛、父マンハッタンカフェ、母トゥインクルレイン、母父Gildid Time)の2520万円(税込み)。生産、所有は新ひだか町三石の松本牧場。飼養者は(有)ミルファームOcean View Park。テイエムの冠名で知られる竹園正継氏が落札した。

最高価格馬

 市場を振り返って日高軽種馬農協の荒木正博組合長は「合格点を80点とするならば今年の市場は78点か79点くらいではないか」と“採点”し、「初日の勢いならば20億は売れると予想していた。22億から23億くらいは売れてほしいとも期待していたが、思ったほど数字が伸びなかった」とコメントした。

荒木組合長

 381頭もの上場頭数は、さすがにセレクション(選抜)された頭数とは言いがたく、結果を見てもそれは裏付けられる。かつて7月の市場は「特別市場」と称され、文字通りの「選ばれた1歳馬」が上場されていたものだった。

 だが、1日ではとても捌き切れない頭数に膨れ上がったのは、当歳市場中止により、組合が売り上げ確保に走ったためではないか。

 その結果、とてもセレクションセールとは思えないような価格で上場馬を手離すケースが続出した。税込み500万円未満の落札馬は2日間で計30頭に達した。「値段がついたら安くても売っておきたい」と割り切る生産者(所有者)が少なくなかったことによるものだが、これもまた今の生産地の厳しさを反映しているとはいえ、平均価格を下げる要因のひとつになった。

 玉石混交と言ってしまえば厳し過ぎるだろうが、社台スタリオンの人気種牡馬たちの産駒も数多く上場されたものの、購買者のより厳しい目が注がれたことにより、必ずしも生産者の思惑通りの結果にならなかったケースも多い。生産者にとっては1歳馬の主力級を揃えて市場に臨んだはずだが、何とも残念な結果に終わったと言わざるを得ない。

 この価格の低落傾向はこと日高に限って言えば、去る5月下旬に札幌競馬場で開催された2歳馬トレーニングセールから続いている。次回のサマーセールに影響が及ばないことを祈りたいのだが…。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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