勝利騎手のメッセージ

2002年11月12日(火) 14:59

 期待通りのファインモーションの勝利でした。その強さがどれほどのものか、武豊騎手の表情から推し量ることができたのではないでしょうか。

 レース後に受ける勝利騎手インタビューでは、その騎手の人柄や、その勝利の意味がよく伝えられます。その瞬間、スタンドの人たちを前に語られる言葉、その内容に期待を抱かれる騎手の中でも、武豊騎手の言葉は、いつも出色です。

 タニノギムレットの日本ダービーのときは“皆さんも、ギムレットで乾杯して下さい”と呼び掛け、ビリーヴでスプリンターズSを勝ったときは“ゲートに入るのは一番遅かったけれど、出るのは一番速かった。新潟は大好き”とリップサービスも。その瞬間、みんなが楽しくなりました。

 ところが、ファインモーションの秋華賞、エリザベス女王杯は、少し雰囲気がちがっていました。いつ、あの軽妙な言葉がとび出すかと待ち構えていても、最後まで真正面から受け止める姿勢はくずれませんでした。それに、その表情も柔和になることはありませんでした。

 ファインモーションという器がどれほど計り知れないものか、この先の戦いの場に備え、かえって身を引き締めているような感じでした。こういうことは、恐らく初めてではないでしょうか。その言葉より表情から、なみなみならぬ決意が感じ取れたのです。

 秋華賞の後も、エリザベス女王杯の後も、むしろ“これからファインモーションの真価を問うところ”という思いを、そのインタビューから受け取れました。語られた言葉を私たちへのメッセージとし、今後の楽しみとしていいのだという彼からの伝言であったと思います。

 年度代表馬という呼び声も聞えていますが、それよりも、もっと大きなものをファインモーションにはつかんでほしいと願います。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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