ホッカイドウ競馬、本年度開催終了

2002年11月25日(月) 19:56

 先週(11月21日)、「道営記念」が行われ、今年度のホッカイドウ競馬が全日程を終了した。83日開催で売り上げは当初目標の113億円を大きく割り込み、ついに98億円余にまで減少してしまった。

 堀知事はすでに道議会において来年度の開催を「明言」しているとはいうものの、予想をかなり下回る売り上げに終ったことで、依然として厳しい情勢にあることは間違いない。

 10月のことだが、各生産者あてに北海道競馬事務所から「生産者の皆さんの愛馬をぜひ、ホッカイドウ競馬へ!!」と題する小冊子が届いた。26頁フルカラーのこの冊子は、タイトルにある通り、我々生産者にホッカイドウ競馬への入厩を呼びかけるパンフレットである。

 内容は多岐にわたるが、冒頭には「ホッカイドウ競馬で出走させ現役競走馬として付加価値を付けて販売」することが謳われており、「オーナーブリーダーになることのメリット」として、(1)全国一多い認定競走を活用し、ホッカイドウ競馬所属のまま高額賞金のJRAへ挑戦可能、(2)預託料は中央の約4分の1、(3)活躍馬をレース後にセリで売る「トレーディングレース&セール」を全国で唯一開催、(4)総額1億5千万円相当の平成15年度種付権利が副賞となる「スタリオン競走」を33レー実施、(5)冬期間もJRAや南関東などのレースに出走可能、などの利点を列挙している。

 とはいえ、この中でホッカイドウ競馬が独自にアピールできるものは(2)預託料が安い、ということだけである。他の4点は、いずれも他力本願の、JRAやJBC協会、日高軽種馬農協などからの「援助」なくしては、一つも成り立たないものばかりだ。いわば、他人の財布をあてにすることで初めて成立することばかりなのである。

 もっとも、昨年までの段階ですでに累積赤字が157億円にまで達していては、新たな企画を新たな財源で行うことなど、不可能になってしまっているのだが…・。

 生産地の最大の関心事は、日本の競馬が今後どうなって行くのか、ということである。それと同時に、ホッカイドウ競馬も今後いかなる方向に向かうのか、にも大きな関心を寄せてはいる。だが、生産者として、ホッカイドウ競馬にいかなる貢献が可能か、という議論になると、かなり多種多様な見解の相違があるのも事実だ。ある人は「ホッカイドウ競馬などもはや救済はできない。廃止もやむを得ない。」といい、またある人は「ホッカイドウ競馬がなくなっては、生産地は壊滅的な被害を受けてしまう。是が非でも存続させなくてはならない。」との擁護論を主張する。「廃止もやむなし」という意見は、決して声高に公の場で語られることはないが、水面下では相当数の生産者が、すでにホッカイドウ競馬への関心も愛着も失っているように思えてならない。このパンフレットは、その辺を見越して、来年度デビュー予定の現1歳馬を多数確保したいという主催者の意図がにじみ出ているのだが、すでに今年の売り上げ実績から、来年度はおそらく更なる開催経費の節減が打ち出されるであろうことは想像に難くないわけで、そうなれば、今年度大幅に削減された報償費(本賞金や手当など)が、より一層削減されることになるのでは、とも思われる。

 700頭とも言われるホッカイドウ競馬の2歳馬のうち、認定競走の勝ち馬になれるのは180頭。認定競走に負けた多くの馬たちは、大幅な赤字を覚悟せざるを得ないのが現在のホッカイドウ競馬の現状であり、大半の馬が「使えば使うほど赤字が増える」ことから、生産者の意欲も減退してしまう大きな原因になっている。

 来年度、ホッカイドウ競馬も更に投資をして「馬単、三連複、三連単を導入」との計画があると聞くが、これが果たして低迷する売り上げ回復のカンフル剤になるかどうか。いずれにせよ、ホッカイドウ競馬に限らず、地方競馬全体の動向に、私たち生産者の浮沈がかかっている。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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