週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2002年12月17日(火) 16:04

 2002年12月15日は、香港の競馬関係者にとって生涯忘れ得ぬ歴史的1日となった。御存知の通り、4レース行われた香港国際競走のうち3レースを、地元香港勢が制覇。競馬の世界地図において、実力的には2流の謗りを免れなかった香港が、これを機に完全に競馬一流国の仲間入りを果たしたとみてよかろう。

 スプリントの覇者オールスリルストゥーを管理するデヴィッド・ヘイズは、生まれ故郷であるオーストラリアにおけるチャンピオントレーナーの座を捨てて、95年から香港をベースにしている男である。豪州時代にジューンで豪州最高のレース・メルボルンCに勝ち、ベタールースンアップでアジアの最高峰ジャパンCを制覇。そして今回オールスリルズトゥーで香港の国際競走を制覇した今、彼にとっての次なる目標はヨーロッパだという。

 「ホースマンとしての夢は、競馬発祥の地イギリスで勝つこと」というヘイズ師は、オールスリルストゥーで2003年6月21日に行われるロイヤルアスコットのゴールデンジュビリーSに挑む計画を立てている。

 マイルを勝ったオリンピックイクスプレスは、日本でもお馴染みのアイヴァン・アラン調教師の管理馬だ。オリンピックイクスプレスは脚元に常に不安を抱えている馬で、今季ここまで1000m戦を1回しか使えなかったのも、そのためだった。前走後も、スタッフが24時間態勢で氷水で脚元を冷し、ようやく出走にこぎ着けた経緯があった。

 今後の予定はあくまでも脚元と相談しながらとしながらも、3月にドバイで行われるデューティーフリーS、更には今年も出走したシンガポールのインターナショナルCを視野に入れているという。

 カップを制したプレシジョンの管理者デヴィッド・オウトンは、既に15年に渡って香港で厩舎を構えている英国人だ。そしてプレシジョンの激走に、観客同様に驚いていたのが彼であった。

 「世界王者(グランディラ)に勝てるとは、予期していなかったことが起きた」と、その胸中を語った。今後の目標は、来年4月のクイーンエリザベス2世Cにおき、その結果次第で海外遠征を考えたいとしている。

 プレシジョンはフランス産馬で、生産者はなんと、この日ヴァーズをアンジェアブリエルで制したアンリ・デヴァンとアントニア・デヴァン夫妻であった。現在もプレシジョンの母ストップフィドリングを所有している夫妻が、超ハッピーであったことは言うまでもない。

 12月15日のシャティン競馬場は、前年比8.3%アップとなる55,451人の大観衆で埋まり、客席は地元馬の快挙に揺れた。

 だが一方で売り上げは低調で、今季からG1に格上げされたスプリントこそ前年を僅か上回る8160万香港ドルの売り上げがあったものの、ヴァーズが前年比8.5%ダウンの7840万ドル、マイルが前年比14.7%ダウンの9560万ドル、カップが前年比7.6%ダウンの9840万ドルと、低迷する一般景気を反映した厳しい結果となった。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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