ダンシングブレーヴを彷彿させるキャメロット

2012年01月11日(水) 12:00

 遅ればせながらではございますが、新年明けましておめでとうございます。日本国外の競馬や生産にまつわる話題をお届けするこのコーナー。興味深いトピックをわかりやすくお伝えするよう、これまで以上に努める所存ですので、今年も御贔屓のほどよろしくお願い申し上げます。
         
 芝平地シーズンの開幕まではまだ2か月以上あり、クラシック戦線の足音もまだ遠く彼方にあるイギリスだが、シーズンオフの間も真っ赤に燃えているアンティポスト戦線で主
役を務めている馬たちを御紹介したい。

 牡馬クラシックの2000ギニー(5月5日、ニューマーケット)、ダービー(6月2日、エプソム)で、いずれも本命の座にあるのがキャメロット(牡3、父モンジュー)である。

 父は言わずと知れたトップサイヤーで、母はG3ダリアS勝ち馬ターファー(その父キングマンボ)という血統の同馬。2010年のタタソールズ・オクトーバー・ブック1にて、セッション6番目の高値となる52万5千ギニーでクールモアグループに購買されて、A・オブライエン厩舎に入厩。7月14日にレパーズタウンのメイドン(芝8F)でデビュー勝ちを果たした後、ひと息入れて臨んだドンカスターのG1レイシングポストトロフィー(芝8F)も楽勝した逸材である。

 武器とするのは、瞬発力だ。欧州タイプの一流馬には、トップスピードに乗るまで時間を要する馬が多いが、1〜2完歩で全力疾走に移行出来るのがこの馬の強み。例えて言えば、20世紀後半の名馬ダンシングブレーヴを彷彿させるタイプである。

 前述したように、キャメロットは2000ギニーでもダービーでも1番人気に推されているが、レイシングポストトロフィーと言えばダービーへの登竜門と言われているレースだ。ブックメーカー各社も、ダービーにおけるキャメロットには3.75倍から4倍のオッズを提示。これに対して各社とも2番人気馬のオッズは17倍以上だから、ダービーにおけるキャメロットはまさに1本被りの大本命となっている。

 一方、2000ギニーへ向けて各社がキャメロットに提示しているオッズは4〜6倍だ。そして、ここで各社が8〜11倍のオッズを掲げて2番人気に位置付けているのが、既に日本でもお馴染みの存在となっているダビルシム(牡3、父ハットトリック)である。

 引退後、北米ケンタッキーで種牡馬入りしたハットトリック。そのハットトリックを受胎した牝馬ルーモアドが大西洋を越え、フランスで出産した産駒がダビルシムである。アルカナ・ドーヴィルセールで3万ユーロという廉価で購入され、C・フェルラン厩舎の一員となった同馬は、昨年6月にデビューを果たすや父譲りの末脚を武器に連戦連勝。ドーヴィルのG1モルニー賞(芝1200m)、フランスにおける2歳牡馬チャンピオン決定戦的位置付けにあるロンシャンのG1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)を含めて5戦5勝で2歳シーズンを終え、カルティエ賞欧州2歳牡馬チャンピオンに選出された。

 G1戦でいずれもこの馬の手綱をとった名手フランキー・デトーリ騎手が、「クラシック級」と称賛したこの馬が今季も連勝街道を突っ走れば、日本の馬産界にもポジティヴな影響をもたらすことになろう。

 牝馬戦線では、1000ギニー(5月6日、ニューマーケット)で断然の1番人気、オークス(6月1日、エプソム)でも他馬と僅差ながら本命の座にあるのが、メイビー(牝3、父ガリレオ)である。

 こちらも父は言わずと知れたトップサイヤーで、英ダービーなど3つのG1を制したドクターデヴィアスや、日本で走ってG1高松宮杯などを制した後、ニュージーランドで種牡馬として成功したシンコウキングらと同じ牝系の出身だ。ダビルシムと同じ2010年のアルカナ・ドーヴィルセールで、こちらは牝馬としてはセッションで4番目の高値となる34万ユーロで購買され、キャメロットと同じAオブライエン調教師の傘下に入った。

 5月11日という早期のデビューから、8月21日にカラで行われたG1モイグレアスタッドS(芝7F)まで、5戦5勝という成績で突っ走り、ダビルシム同様、カルティエ賞欧州2歳牝馬チャンピオンの座に輝いている。

 ブックメーカー各者が、1000ギニーで4〜6倍、オークスで7〜13倍のオッズを掲げているメイビー。2歳シーズンにおける彼女は確かに同世代では抜けた存在だったが、母スモラは2歳8月に距離5Fの準重賞セントヒューズを制して以降、3歳秋まで10戦して1つも勝ち星を挙げられなかった馬だけに、どれだけ成長力があるかがカギとなりそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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