北米3歳三冠第2弾プリークネスSを制すのは?

2012年05月16日(水) 12:00

北米3歳三冠第二関門のG1プリークネスS(d9.5F、ピムリコ)の発走が、今週土曜日に迫っている。

 一冠目のG1ケンタッキーダービー(d10F、チャーチルダウンズ)で上位5着までに入った5頭のうち、3着馬のデュラハン(牡3、父イーヴンザスコア)を除く4頭が出走の構えを見せており、当然のことながら有力視されている。

 中でも人気を集めそうなのは、ダービーの1、2着馬ということになるのだが、その両馬のどちらを上位と見るかは、見解の分かれるところだ。

 本来ならば、二冠を狙うアイルハヴアナザー(牡3、父フラワーアレイ)が断然の主役となるべきところだが、どうやら当日1番人気の座に就くのは、2着馬のボディマイスター(牡3、父エンパイアメーカー)となりそうな情勢だ。というもの、ケンタッキーダービーにおけるパフォーマンスを分析すると、最も内容の濃い競馬をしたのがこの馬だったからだ。

 確固たる軸馬不在と言われた今年のケンタッキーダービーで、直前のG1アーカンソーダービー(d9F)を9.1/2馬身差で圧勝した内容を評価され、5.2倍のウォーム・フェイヴァリットに推されたのがボディマイスターだった。

 人気の背景には、馬の力とともに、この馬を管理するのが4度目のケンタッキーダービー制覇を目指すボブ・バファートであったことも、大きなファクターとして存在していたと思う。

 そのボディマイスターが選択した戦法は「逃げ」だったのだが、驚かされたのがこの馬が刻んだラップだった。ベテランのマイク・スミスを背にしたボディマイスターの、半マイル通過は45秒39。これは、ケンタッキーダービーで途中のラップが発表されるようになって以降で5番目というハイラップだったのだ。その後も、一向にペースを落とす気配のなかったボディマイスター。6F通過ラップの1分9秒80は、史上4番目のハイラップとなった。

 後続に3馬身ほどの差をつけて直線に入った同馬は、さすがに最後の1Fで脚が上がらなくなったが、それでも、ゴール地点でこの馬を交わすことが出来たのは、前半6番手で競馬をしていたアイルハヴアナザー1頭のみで、残るライバルたちの追撃をしのいで2着を確保したのが、ケンタッキーダービーにおけるボディマイスターであった。

 二冠目の舞台となるピムリコは、一冠目の舞台であるチャーチルダウンズに比べると最後の直線が75mほど短く、先行馬有利のトラックと言われている。内容的に極めてきつい競馬を強いられながら、1.1/2馬身しか負けなかったアイルハヴアナザーとの序列を、二冠目では逆転すると見るファンが多いのは、この辺りが根拠となっている。

 もっともアイルハヴアナザーとて、ケンタッキーダービーは19番枠からの発走というディスアドヴァンテージを克服しての勝利であったことも、忘れてはならない。しかも、ボディマイスターにとってプリークネスSは今季6戦目の競馬になるのに対し、アイルハヴアナザーにとってのプリークネスSは今季4戦目だ。

 よりフレッシュな状態で二冠目に臨めるのはアイルハヴアナザーに、プリークネスSでも勝利を収めてもらい、1978年のアファームド以来絶えている三冠への夢をつないでもらいたいと願うファンも、数多くいるのが実情だ。

 今年のケンタッキーダービーを振り返る上で、「ハイペース」とともにキーファクターとなったのが、「トラフィックジャム」である。1周目のスタンド前をはじめ、複数の局面で馬群がごちゃつき、スムーズな競馬が出来なかった馬が多かったのである。

 例えば、発走直後に他馬と衝突し、なおかつ、1Fほど進んだ1周目のスタンド前で再度進路が狭くなる場面があったのが、ウェントザデイウェル(牡3、父プラウドシティズン)だった。事前の目論見とは全く異なる、後方からの競馬を強いられることになった同馬だったが、そこから挽回して勝ち馬に2馬身と少し遅れをとる4着まで押し上げた内容を、高く評価するファンも少なからずいるのである。

 別路線組では、5月5日にピムリコの特別(d8.5F)を制して3勝目を挙げたプリテンション(牡3、父ブルーグラスキャット)、アケダクトでニューヨーク産馬限定戦を3連勝してきたゼッターホルム(牡3、父シルバートレイン)、4月7日のG1ウッドメモリアルS(d9F)の3、4着馬で、ともにダービーはスキップしたティーズオヴザドッグ(牡3、父ブルーグラスキャット)とタイガーウォーク(牡3、父テイルオヴザキャット)らが出走の構えを見せているが、やや小粒なのが実情だ。

 残念ながら、日本ではクローズドサーキットも含めて、放映予定のないプリークネスSだが、その結果にはぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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