大改修完了!中山競馬場の新生ターフ

2012年09月04日(火) 18:00

 春の開催は毎週のように雨が降り、強烈に馬場が荒れていた中山競馬場。――あれから5か月。いよいよ今週末から始まる秋競馬を前に、今どんな状態にあるのでしょうか。中山競馬場・馬場造園課の二村啓介課長と一緒に、一周歩かせていただきました。

馬場を愛する二村課長

馬場を愛する二村課長

赤見 :芝がみっちりと生えていて、クッションが軽くて気持ちいいですね!

二村 :「そうなんですよ。私は毎日歩いていますが、とても歩きやすいのでちっとも痩せません(笑)。今は緑が少し明るい色ですが、この後肥料を撒くと、開催日にはもっと丈が伸びて色も濃くなるんです」

赤見 :今年の春の中山は、とにかく雨が降って大変だったんじゃないですか?

二村 :「特に2回中山はひどくて、開催中1度も良馬場がなかったんです。これは昭和58年の春の阪神以来の出来事でした」

赤見 :馬場の影響を大きく受けた今年の『皐月賞』ですが、直前に“重”から“やや重”に替わりました。やっぱりGIレースはいい馬場じゃないと…みたいな空気があるんでしょうか?

二村 :「いやいや、その時の状態をそのまま反映していますよ。馬場状態は、天気に合わせてコースに2人〜5人のスタッフを配置して、それぞれの持ち場の状態を常にチェックしています。あれだけ広いですから全部が同じというわけではなく、“重”の部分もあるし“やや重”の部分もありますが、それらを総合的に判断して発表するんです。

『皐月賞』の時は、直前に替わってしまって…決断するのにプレッシャーもありました。馬券を買うファンの方たちにとっては、もう少し早く“やや重”発表していた方が検討しやすかったかもしれません。でも、“やや重”になっていないのに予測で発表するわけにはいきませんから、結果的に『皐月賞』の直前になってしまいました」

手作業の張り替え

手作業の張り替え

張り替えの境目がまだ目立つ状態

張り替えの境目がまだ目立つ状態

明るい緑の芝

明るい緑の芝

赤見 :あれだけ馬場が荒れたら、改修も大変だったんじゃないですか?

二村 :「そうですね。昨年は震災の影響で7月半ばまで中山開催でしたから、大規模な改修が出来なかったんです。今年は芝コース全体の1/4に当たる1万9000平方メートルの芝を張り替えました。コース内側はほとんどですね。

 傷んだ芝を剥ぎ取って、土壌を整えて基礎となる路盤を造り、その上に新しい芝を張って行きます。張り替えは手作業ですから、作業員の方たちも大変だったと思いますが、今年は張り替えた芝と張り替えてない芝の繋ぎ目も上手く成長してくれて、例年以上にいいターフが出来上がりました」

赤見 :となると、秋開催は先行有利の速い馬場になりそうですね。

二村 :「今開催が終わったら、野芝の上に洋芝をオーバーシードして2種類の芝にするんですが、今開催は一年で唯一野芝のみで行うんです。中山競馬場の開催を考えると、芝にとってはこの時期が一年の始まり。基礎となる野芝の生育がとても良かったので、年末までいい馬場が保てるんじゃないかと思っています」 

赤見 :レコードが出た時はどんなお気持ちですか?

二村 :「正直、嬉しくないですね。馬場が硬過ぎると批判されますから。確かに昔は馬場の硬度が120くらいあった時期もありました。でも今は硬度80〜90くらいに設定していて、硬くはないんですよ。海外の競馬場、例えばイギリスのエプソム競馬場と同じです。硬度に関しては、かなり気を使っていますよ」

赤見 :硬度の調整というのは、どういう風に行っているんですか?

路盤の調整

路盤の調整

二村 :「芝を剥がして路盤を調整する時に、機械を使って土をかくはんしたり細かい穴を開けるんです。開催中もJRAが開発した機械で10mおきに硬度を計っています。もっと柔らかい馬場を造ることも可能ですが、柔らかすぎると脚を取られたりしてかえって良くありませんから、ちょうどいい硬度に保つことを心がけています」

赤見 :馬場を造る上で、一番重要視されていることは?

二村 :「均等性ですね。馬場が均等じゃないと事故の原因にもなりますし、そこは徹底しています。ダートも同じで、常に砂の深さを均等に保っています」

赤見 :では、一番難しいことは?

出来上がった新生ターフ

出来上がった新生ターフ

二村 :「それは天気ですね。こればっかりはどうにもなりません(苦笑)。8月に雨が降らなかった分、9月に大量に降るんじゃないかと心配しているんです。開催前には必ずJRAのホームページで馬場情報を掲載していますから、こまめにチェックしていただけるといいと思います。金曜日や土曜日に降って、乾かないままレースが行われると、芝が剥げてボコボコになってしまいますが、それ以外の平日に降る分には問題ありません。逆に平日には降った方が芝にはいいですから。

 今回の馬場改修では、路盤に新たに溝を造ってこれまで以上に排水性を高めた部分もありますし、天気によって刻々と変化していきますから、その辺りも併せてレースを楽しんでいただけると嬉しいですね」

 手造りで整えられた馬場は、競走馬たちの登場を待つように一面緑色に輝いていました。秋競馬の開催は、今週末スタートです!![取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
9/16(日)、凱旋門賞を目指すオルフェーヴルが前哨戦のフォワ賞に挑みます。そこで次回からは、過去に凱旋門賞へと挑戦した日本馬関係者を直撃取材。初回のゲストは、ディープインパクトを手掛けた市川明彦厩務員&池江敏行調教助手です。公開は9/11(火)18時、ご期待ください!

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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