ケンタッキーダービー&オークス戦線で注目の種牡馬登場

2013年01月16日(水) 12:00

 2013年を迎えて2週間が経ち、北米では開催まで4か月を切ったケンタッキーオークス(5月3日)、ケンタッキーダービー(5月4日)へ向けた戦いが、徐々にヒートアップしている。

 ケンタッキーオークスもケンタッキーダービーも今年から、フルゲートになった際の出走馬選考基準が変わった。昨年までは重賞競走における賞金の獲得額が多い順に選ばれていたが、今年からはポイントシステムが導入されたのだ。

 詳しくは昨年6月20日付けの当コラムを御参照いただきたいが、9月末から4月後半までの間に組まれた2、3歳戦のうち、オークスは35競走、ダービーは36競走がポイントレースに指定され、時期や格に応じてレースごとに設定されたポイントの累積が多い順に出走馬を選考するシステムが導入されたのである。

 導入理由のひとつが、本番のオークスやダービーだけでなく、そこに至るまでの戦線の推移をファンに楽しんでもらいたいというものだったが、メディアにはポイント指定競走が行われるたびに、「現在のポイント首位は○○」のような記事が掲載されているから、現段階で主催者側の目論見はある程度的中していると言ってよさそうである。

 オークス、ダービーともまだ戦線の序盤戦ではあるが、現段階でキーワードのひとつとなっているのが“イントゥミスチフ”である。

 ケンタッキー州スペンドスリフト牧場で供用されている種牡馬イントゥミスチフは、05年生まれで現在8歳。G1ドンH、G1フロリダダービー、G1ブルーグラスSなどを制したハーランズホリデー(その父ハーラン)の初年度産駒として生まれたイントゥミスチフは、OBSマーチセールにて18万ドルで購買されて西海岸の伯楽リチャード・マンデラ師の厩舎に入厩。デビュー3戦目にハリウッドパークのG1キャッシュコールフューチュリティ(AW8.5F)を制し、ケンタッキーダービー候補となった馬である。

 残念ながら故障で3歳三冠は全休。復帰後、G1マリブS(AW7F)2着などの成績を残したものの、ビッグタイトルは手に出来ないまま3歳一杯で引退。09年に種付け料12,500ドルで種牡馬入りをした。ちなみに昨年の種付け料は7500ドルまで下降している。

 今年の3歳世代が、10年に生まれたイントゥミスチフの初年度産駒にあたるわけだが、これがなかなかの動きを見せているのである。

 例えば、年明け最初のダービーポイント指定競走として、1月5日にサンタアニタで行われたG3シャムS(d8F)で、オッズ1.4倍の1番人気に応えて優勝したゴールデンセンツ(牡3)が、イントゥミスチフの仔だ。

 昨年9月にデルマーのメイドン(AW5.5F)でデビュー勝ちした後、東海岸に遠征してダービーポイント指定競走のG1シャンパンS(d8F)に挑み2歳王者シャンハイボビーの2着に健闘した同馬。続いてこれもダービーポイント指定競走のG3デルタジャックポットS(d8.5F)に向かい、ここを制して重賞初制覇。そして年明けのG3シャムSも制したゴールデンセンツは、この段階でダービーポイントが24点となって、リーダーボードの首位に立っているのである。

 西海岸でシャムSが行われた1月5日、東海岸で行われた3歳馬のG2ジェロームS(d8F70y)は、ダービーポイント指定競走ではなかったが、ここを制したのもイントゥミスチフの初年度産駒の1頭であるヴァイジャック(セン3)だった。昨年11月にアケダクトのメイドン(d6.5F)でデビュー勝ちを飾った後、12月に同じくアケダクトで行われた特別(d7F)を5.3/4馬身差で制し、2戦2勝の成績でジェロームSに挑んだ同馬。ジェロームSでも2.25倍の1番人気に応えて優勝し、3連勝で重賞初制覇を果たしたヴァイジャックは、東海岸における有力なダービー候補となっている。

 現段階でのダービーポイントはゼロだが、次走は3月2日にアケダクトで行われるダービーポイント指定競走のG3ゴーサムS(d8.5F)が予定されており、ポイント獲得をもくろんでいる。

 さらに、牝馬戦線で5戦し2つの特別を含めて3勝を挙げているシッティンアットザバー(牝3)という産駒もいるイントゥミスチフは、種付けシーズンを間近に控えた馬産地でも注目される存在となっている。

 実際に、こうした産駒の動きを受け、当初は昨年と同じ7500ドルと発表されていたイントゥミスチフの今年の種付け料が、2万ドルとなることが発表されている。

 さて、牝馬のケンタッキーオークス戦線における有力馬には、実はもう1頭、イントゥミスチフと所縁の深い馬がいる。昨年11月のG1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)を制し、現段階でケンタッキーオークス制覇に最も近い存在と言われているのがビーホールダー(牝3、父ヘニーヒューズ)だが、この馬がイントゥミスチフの5歳年下の半妹なのだ。

 すなわち、ダービー戦線ではイントゥミスチフの産駒が躍動し、オークス戦線ではイントゥミスチフの妹が最前線にいるというのが、現段階における北米の3歳世代だ。

 ビーホールダーは、オークスポイントのリーダーボードでは目下10点で第5位に甘んじているが、1月21日にサンタアニタで行われるオークスポイント指定競走のG2サンタイネスS(6.5F)に出走予定で、ここを勝てばポイント首位に躍り出ることになっている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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