ハリケーンフライvsダーラン、新旧一騎討ちの行方は!?

2013年01月30日(水) 12:00

 1月中旬から雪による開催中止が相次いでいた英国だが、26日(土曜日)にチェルトナムで組まれていた「フェスティヴァル・トライアル開催」は無事行われ、3月12日〜15日に施行される「チェルトナム・フェスティヴァル」における主要競走へ向けた勢力分布が、かなり明確になってきた。

 ハリケーンフライ(セン9、父モンジュー)とダーラン(セン6、ミラン)による、新旧一騎討ちムードが整いつつあるのが、3月12日(火曜日)のメイン競走となるG1チャンピオンハードル(芝16F110y)だ。 

 ハリケーンフライは、2年前(11年)のこのレースの勝ち馬である。連覇を狙った12年は、シーズン当初の調整遅れが響いたか、単勝オッズ1.67倍という圧倒的人気を裏切り3着に敗れたが、ここ3シーズンで12戦して敗れたのはそのレースただ1度という、アイルランドハードル界の距離2マイル路線における、自他ともに認める最強馬である。

 1月27日(日曜日)にレパーズタウンで行われたG1アイリッシュ・チャンピオンハードル(芝16F)も、ほとんど馬なりで楽勝してこのレース3連覇を達成。盤石の態勢を整えてのチャンピオンハードル参戦となる。

 ブックメーカー各社が、これだけの実績馬と差の無いオッズをつけているダーランは、ハードルデビューしたのが昨シーズンで、障害のキャリア7戦という新興勢力である。その評価が一気に高まったのが、今シーズン緒戦となった、12月26日にケンプトンで行われたG1クリスマスハードル(芝16F)だった。

 昨シーズンのチェルトナム・フェスティヴァルでG1トライアンフハ−ドル(芝17F)を制しているカントリーワイド(セン5)や、同じく昨シーズンのG1シュプリームノーヴィスハードルでダーランを2着に退け優勝したシンダーズアンドアッシュス(セン6)らが相手となったこのレース。直線入り口で4頭が横に並ぶ熱戦となった中、障害戦のゴール前とはとても思えぬ桁違いの末脚を繰り出し4馬身半差の快勝を演じたのがダーランだった。

 ハリケーンフライがルビー・ウォルシュ、ダーランがトニー・マッコイと、手綱をとるのが名手ふたりというのも、一騎討ちムードに拍車をかけている。

 今年のチェルトナム・フェスティヴァルの主要競走で最も固い本命馬となっているのが、3月13日(水曜日)のメイン競走となるG1クイーンマザーチャンピオンチェイスに出走を予定しているスプリンターセクレ(セン7、父ネットワーク)だ。

 ナショナルハントフラットを2戦、ハードルを4戦した後、昨シーズンからスティープルチェイスに転向した同馬だが、転向初年度となった昨シーズンの成績は5戦5勝。チェルトナム・フェスティヴァルのG1アークルチャレンジトロフィー(芝16F)を含めて2つのG1を制する活躍を見せ、戦線のフロントラインに台頭した。

 今季も、緒戦となった12月8日のG1ティングルクリークチェイス(芝16F、サンダウン)を15馬身差で制したのに続き、雪で開催が一週間延びて競馬場も変わった1月26日のG1ヴィクターチャンドラー・クラレンスハウスチェイス(芝16F110y、チェルトナム)も14馬身差で制し連勝し、スティープルチェイス7戦7勝の成績で本番を迎えることになった。

 ブックメーカーの前売りだと同馬のオッズは1.29倍〜1.4倍で、2番人気以下はどの社のどの馬も5倍以上つくから、馬券的には完全な無風区となっている。

 一転して大混戦模様となっているのが、3月14日(木曜日)のメイン競走となるG1ワールドハードル(芝24F)だ。09年からこのレースを4連覇中で、09年1月から18連勝を継続中の“リヴィングレジェンド”ビッグバックス(セン10、父カドゥーダル)が故障で戦線を離脱。絶対王者が不在となり、誰が台頭してくるのか興味津々見ていたら、一気に抜け出すことが出来た馬はおらず、現段階ではオッズ10倍以下に5頭がひしめくバトルロイヤル状態となっている。

 そんな中、前売り戦線のマーケットリーダーとなっているのが、各社5倍〜6倍のオッズを掲げるレーヴデシヴォラ(セン8、父アセッサー)だ。12月22日にアスコットで行われたG1ロングウォークハードル(芝25F)、1月26日にチェルトナムで行われたG2クリーヴハードル(芝24F)を連勝中の馬である。

 レーヴデシヴォラとほとんど変わらぬオッズで、ブックメーカーによっては1番人気に推している社もあるのがオスカーウィスキー(セン8、父オスカー)だ。12月15日にチェルトナムで行われたG2レルキールハードル(芝20F110y)を前年に続いて連覇した後、1月26日のG2クリーヴハードルがレーヴデシヴォラに1/4馬身差の2着だった。

 5.5倍〜9倍のオッズで3番手評価となっているのがクエヴェガ(牝9、父ロバンデシャン)だ。09年から12年までチェルトナムのG2メアズハードル(芝20F)を4連覇中で、今季の最大目標も5連覇がかかる3月12日のG2メアズハードルにおいているのだが、ビッグバックス不在ならばワールドハードルに出ても面白いと、関係者もファンも見ている馬である。陣営は、12日のメアズハードルを使って中1日でワールドハードルへという、仰天プランも口にしているが、果してどうなるか。

 12月28日にレパーズタウンで行われたG2クリスマスハードル(芝24F)で3度目の重賞制覇を果したモンクスランド(セン6、父ベネフィシャル)、同じく12月28日にレパーズタウンで行われたG1レクサスチェイス(芝24F)で3度目のG1制覇を果したタイダルベイ(セン12、父フレメンスファース)の2頭が、オッズ7〜10倍で4番人気を争っている。

 3月15日(金曜日)のメイン競走となるG1チェルトナムゴールドC(芝26F110f)へ向けた前売りで、各社横並びで1番人気、(オッズ3.75倍〜4.5倍)に推しているのがボブスワース(セン8、父ボブバック)だ。ナショナルハントフラットで2戦1勝、ハードルで4戦4勝の成績を残した後、昨シーズンからスティープルチェイスに転向した同馬。4戦目にチェルトナム・フェスティヴァルのG1RSAチェイス(芝24F110y)を制して、スティープルチェイスG1初制覇を達成した。

 12月1日にニューバリーで行われたG3ヘネシーゴールドC(芝26F110y)も白星で通過し、今季も順調な滑り出しを見せたが、出走予定だった1月26日のコッツウォルドチェイス(芝25F110y、チェルトナム)を、直前の獣医検査で咽喉に不調が見つかって回避。陣営はゴールドC出走に問題はないとしているが、今後の調整に充分な注意を払う必要がありそうだ。

 各社5.5倍〜6倍のオッズで2番人気に推しているのが、サーデシャン(セン7、父ロバンデチャン)だ。スティープルチェイス転向初年度だった昨シーズンの成績は5戦5勝。最終戦となったパンチェスタウンのG1チャンピオンノーヴィスチェイス(芝25F)を36馬身差で制してG1初優勝を果し、今後のこの路線を背負って立つことを期待された馬である。

 ところが、今季初戦となった12月9日のG1ジョンダーカンメモリアルチェイス(芝20F、パンチェスタウン)で2着に敗れてスティープルチェイス初黒星を喫すると、12月28日のG1レクサスチェイス(芝24F、レパーズタウン)でも4着に敗退。評価を落としつつあるのが現状だ。

 2年前(11年)のこのレースの勝ち馬で、12月26日にケンプトンで行われたG1キングジョージ6世チェイス(芝24F)を制して6度目のG1制覇を果したロングラン(セン8、父カドゥーダル)と、G1初制覇となった11月24日のG1ランカシャーチェイス(芝24F)を含めて目下3連勝中のシルヴィニアーココンティ(セン7、父ドムアルコ)の2頭が、オッズ7〜8倍で3番人気を争っている。

 この路線では、2月9日にレパーズタウンでG1愛ヘネシーゴールドC(芝24F)が行われる。結果次第では、チェルトナムGCの上位人気が変動する可能性もあるこのレースの行方にも注目したい。

 シーズンのクライマックスへ向けてカウントダウンに入った欧州の障害戦線に、みなさまもぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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