ドバイWCを占う重要な前哨戦に出走する有力馬たち

2013年03月06日(水) 12:00

 トレイルブレイザー(牡6、父ゼンノロブロイ)にとってドバイ初陣となるG1アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3(AW2000m)の発走が、今週土曜日(9日)に迫っている。

 アメリカのデイル・ローマン調教師が率いるトップホース2頭が既にドバイ入りしており、両馬を9日のスーパーサタデーに組まれたG1アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3と、G3バージナハール(AW1600m)の両競走に使い分けることになっている。

 1頭は、3歳時の昨年、デルマーのG1パシフィッククラシック(AW10F)、キーンランドのG1ブルーグラスS(AW9F)と、2つのG1を制しているデュラハン(牡4、父イーヴンザスコア)だ。同馬は2歳時にも、キーンランドのG1ブリーダーズフューチュリティ(AW8.5F)を制しており、オールウェザートラックは3戦3勝、しかも3勝はいずれもG1という、完璧な戦績を残している馬である。その適性を考慮した陣営は早くから、今季最初の目標をオールウェザートラックのG1ドバイワールドC(AW2000m)に置くと明言しており、その前哨戦としてG1アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3かG3バージナハールを使う予定となっている。

 ローマン厩舎のもう1頭は、5歳時だった昨年、史上初めてとなるG1アーリントンミリオン(芝10F)、G1BCターフ(芝12F)同一年制覇を成し遂げたリトルマイク(セン6、父スパニッシュステップス)だ。主戦場は芝の馬だが、陣営はオールウェザーもこなすと見ており、まずは足慣らしとしてG1アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3かG3バージナハールを使う予定だ。ここで陣営の目論見通りにオールウェザーをこなせば、3月30日はG1ドバイワールドCに向かい、タペタというブランドのメイダンの人工馬場をうまくハンドリング出来ないようなら、3月30日はG1シーマクラシック(芝2410m)に向かうという青写真が描かれている。

 ローマン厩舎の2頭は帯同して3月2日にドバイ入り。4日から馬場入りを開始し、メイダンの環境にも順調に慣れていると伝えられている。2頭のどちらがアルマクトゥームチャレンジに向かうかは、相手関係なども鑑みながら、ローマン師が判断する予定だ。

 シェイク・モハメド率いるゴドルフィンから、一次登録の段階で6頭のエントリーがあるが、ここでの主力となりそうなのが、2月7日にメイダンで行われたG2アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド2(AW1900m)の勝ち馬ハンターズライト(牡5、父ドバウィー)だ。

 昨年秋、イタリアのG1ローマ賞(芝2000m)を制し、芝のG1勝ち馬となっている同馬だが、一方で、オールウェザートラックはここまで4戦3勝と滅法得意としており、英国のブックメーカー各社が発売しているG1ドバイワールドCへ向けた前売りでも上位人気の一角に名を連ねている。

 ゴドルフィン勢では、このレース3年連続での参戦となるプリンスビショップ(セン6、父ドバウィー)も侮れない存在だ。昨年のこのレースでは3着に好走。前走今季初戦となったG2アルマクトゥームチャレンジ・ラウンド2でも、10か月の休み明けを克服して3着に健闘しており、ここはひと叩きされての良化が期待されている。当初は、同日にメイダンで行われるG2ドバイシティオヴゴールド(芝2410m)と両睨みと言われていたが、ここ1本に矛先を向けて来た辺りに、陣営の自信が感じられる。

 ゴドルフィンからは、昨年のG1ドバイワールドC勝ち馬モンテロッソ(牡6、父ドバウィー)の出走も見込まれているが、ここは8か月振りの実戦となるだけに、本番前のひと叩きと見るのが妥当であろう。

 現段階で最終的な出否は未定だが、使ってくれば要注意なのが、M・ドゥコック厩舎のアウェイトザドーン(牡6、父ジャイアンツコウズウェイ)だ。愛国のA・オブライエン厩舎に所属していた時代の11年、ロイヤルアスコットのG2ハードウィックS(芝12F)を制し、飛躍が期待された馬である。その後は5連敗を喫していたが、前走2月21日にメイダンで行われた条件戦(芝2000m)で1年8カ月振りの勝利を奪取。オールウェザーへの適性は依然として未知数だが、ここでもノーマークには出来ない存在だ。

 トレイルブレイザーは、北米遠征を敢行した昨年秋、初戦に選んだG2アロヨセコマイル(芝8F)で、明らかに不向きな距離だったにも関わらず2着に好走している。環境の変化に動じず、与えられた状況の中で常に高い能力を発揮する精神力の強さを持った馬だけに、ドバイという特殊な環境で迎えるオールウェザー初戦でも、決して見苦しいパフォーマンスは見せないはずだ。願わくば、タペタを上手にこなして良い競馬を見せ、有力馬の1頭としてドバイワールドCに向かって欲しいものである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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