『オルフェーヴルの肺出血と競走能力への影響』JRA競走馬総合研究所(1)

2013年07月01日(月) 12:00

宝塚記念1週前の追い切り後に肺出血を起こし、無念の回避となったオルフェーヴル。現役最強馬を襲った「肺出血」とは? 今後の競走能力に支障はないのか? 知っているようで、実は知らない“競走馬の疑問”を解決すべく、JRAの競走馬総合研究所(宇都宮の本所)に潜入。高橋敏之主任研究役に、目からうろこの新事実をたくさん教えていただきました!


おじゃ馬します!

宇都宮にあるJRA競走馬総合研究所

赤見 :「JRA競走馬総合研究所」の研究機関としては、高橋さんが所属されている「運動科学研究室」と「臨床医学研究室」に分かれているということですが、具体的にどんなことをされているのですか?

高橋 :私が所属している「運動科学研究室」は“馬はなぜ速く走れるのか”“馬の体の中身がどうなっているのか”というのを研究する部門になります。

例えば、酸素をどれだけ取り込むかという数値がありまして、スタミナの指標になるんですが、普通の人だと30〜40ml/kg/min、マラソン選手だと80ml/kg/minくらいなんです。これが馬だと130ml/kg/minくらい、鍛えると190ml/kg/minくらいになります。馬は非常にスタミナに優れているというのが、指標から分かります。

赤見 :そういう数値から馬の能力を解明していく。

高橋 :そうですね。筋肉を測ったり、体の中の酵素がどれだけ活発に動いているか、遺伝子がどれだけ体の中で役割を果たしているか、あとは競馬や追い切りなど強い運動を行った時に筋肉の中で乳酸が作られて血液中に出て来るんですが、その時の通路になるタンパク質の量を測ったりということをして、「どういうトレーニングをするとどういうところが鍛えられるのか」「どういうトレーニングをすると馬は速く走れるのか」というのを研究しています。

赤見 :そういうところから、トレーニング方法を確立していくんですね。もうひとつが医療的な分野?

高橋 :はい。それが「臨床医学研究室」になりまして、今ですと腱の再生医療、細胞の元になる幹細胞を取って損傷した屈腱に植えて良くなるかどうかという研究をしています。

赤見 :トレセンとは役割が全く違って、どんどん新しいことを研究していくんですね。

高橋 :トレセンは臨床応用なので、手術の新しいやり方など技術導入を研究所で行って、効果がありそうならばトレセンで応用してということになります。

おじゃ馬します!

運動科学研究室・高橋敏之主任研究役

赤見 :高橋さんが研究されている運動科学は、どうやって現場で取り入れられているんですか?

高橋 :トレセンなどでセミナーを開いて、調教師さんや調教助手さんにお伝えしています。あとは実際にデータを取らせていただいて、調教師さんに「この馬はこういう結果ですよ」というのをお返ししたりすることが多いですね

例えば、大きいエンジンを積んだ車は、あまり回転数を上げなくてもスピードが出るように、馬も心臓が鍛えられてスタミナがつくと、少ない心拍数で同じスピードが出るようになります。1分間の心拍数が170回でハロン20秒で走れるとして、もっと鍛えると150回で同じ20秒で走れるようになるとかが分かるので、そういうデータをお伝えしたりしています。

赤見 :高橋さんはこの研究所にどれくらいいらっしゃるんですか?

高橋 :私はここに15年いまして長いんですけど・・・

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東奈緒美・赤見千尋

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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