2013年10月24日(木) 18:00
10月23日、新ひだか町静内の北海道市場にて、(株)ジェイエス主催の「繁殖馬セール」が開催された。
今年の繁殖馬セール会場の風景
開場は午前7時。1歳市場のように比較展示はなく、それぞれ目当ての馬を待機馬房まで出向いてチェックする方式である。1歳市場並みの多頭数で、多目的施設内の仮設馬房まで使用してのセールであった。
最も上場頭数が多いのは社台グループで、社台ファームの35頭を筆頭に、ノーザンファーム17頭、ノーザンレーシング10頭、社台ブラッドメア15頭、社台コーポレーション白老ファーム13頭と、グループ全体では90頭に達する。それに続くのがダーレー・ジャパンの28頭。その他、市川義美氏、金子真人ホールディングスなどの大手馬主も所有する繁殖牝馬を上場させていた。
とりわけ注目度の高かったのは社台グループ。一気に90頭もの上場とはいえ、毎年夥しい数の牝馬が競走を引退し牧場に上がってくるし、積極的に海外市場でも繁殖牝馬を購買していることから、こうして売りに出される馬もまた多くなるというわけだ。その中からこれはと狙った繁殖牝馬を予算の範囲内で買い求めるのが日高(とは限らないが)の生産者という構図である。
今年の名簿には「優良繁殖牝馬導入促進事業」の対象馬マークが記載されていた。これはJBBAが実施している競走馬生産振興事業の一環で、一定の条件を満たしている繁殖牝馬に限り、購買価格の5分の1以内(上限300万円)を助成するという事業である。年齢11歳以下、当該馬、当該馬の母馬、当該馬の産駒、当該馬の兄弟馬もしくは姉妹馬のいずれかが中央重賞競走、ダートグレード競走、または海外のパートIに格付けされた競走のGI〜IIIのいずれかに優勝していること。または南関東重賞の1着馬であること、という基準が設定されている。
ざっと名簿を見渡したところ、この対象馬マークが付されているのは105頭。全上場馬の半分近くがこの条件に合致していることになる。ただし、購買者がJBBA正会員であることや、このセールにて購買する旨を予め窓口(各JA)に申し込み済みであることが必要なのだが。
セール開始は午前9時半。多頭数であることとリザーブ形式によるセリのために、終了予定時刻は当初午後6時頃になるだろうと予想されていた。いきなり社台ファーム、社台ブラッドメア、ノーザンファーム、ダーレーなどの大手の上場馬がまとまって出てきたこともあり、最初から積極的な競り合いが展開した。
14番目に「サンタフェソレイユ」(9歳栗毛、父アグネスタキオン、母サンタフェトレイル、販売者ノーザンファーム)が登場し、価格は一気に1000万円を突破して1310万円まで行ったところでハンマーが下りた。ルーラーシップを受胎している本馬は、1勝ながらフェアリーS2着の実績を持ち、2歳兄にキングストレイル、母の兄姉にシンコウラブリイ、タイキマーシャル、ハッピーパスなどがいる名血である。
1310万円で落札されたサンタフェソレイユ
2500万円で落札されたヴィーヴァヴォドカ
活発な競り合いがハイライトを迎えたのは、47番「モーニングフェイス」の時である。6歳栗毛のこの馬は父スペシャルウィーク、母ファーストナイト、母の父サドラーズウェルズ。エンパイアメーカーを受胎しており、今年度から供用されたばかりの若馬で、忘れな草賞=OPなど3勝を挙げている。母の兄弟にはバランチーン、ロマノフ、レッドスリッパーズなどの活躍馬がおり、普通はまず繁殖馬セールには出てこない馬だ。
予想通り熾烈な競り合いの末に、林正道氏が3700万円で落札した。販売者は新ひだか町静内の井高牧場。結局、この馬がこのセールでの最高価格馬となった。
中盤以降は、上場頭数が多かったこともあり、やや中弛みするような場面もあった。最後の239番「キャッツプライド」が登場したのは午後4時半頃。途中からセリのペースが速くなり、予定時刻よりも早めに終了した。
このセールでの最高価格馬、モーニングフェイス
それでも国内唯一の繁殖馬セールとして、この市場はすっかり定着した感がある。何より上場頭数の多さがそれを物語る。そして、当セールで取引された繁殖牝馬から生まれた産駒が今年もかなり活躍している。前記エリモピクシーからはクラレント(東京新聞杯、エプソムC)、またグランプリボスの母ロージーミスト、カポーティスターの母サビアーレなど数多い。こうしたことが積み重なり、年々盛況になってきているのだ。
なお、国内唯一であるこの繁殖馬セールは、来年1月22日にここでまた開催される予定である。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。