週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2003年09月01日(月) 12:08

 8月23日(土曜日)から27日(水曜日)までフランスのドーヴィルで行われた、「エージェンシーフランセーズ・ドーヴィル・イヤリングセール」は、上場頭数が前年より減ったことで総売り上げこそ2.9%ダウンの2591万ユーロに終わったものの、平均価格は1.7%アップの73,838ユーロ、中間価格は25%アップの5万ユーロ、バイバックレートが前年の33.7%から22.5%に下降と、まずまず堅調な数字に終わった。

 ヨーロッパで開催される今季初のメジャーなイヤリングセールということで注目されたこのマーケットだが、5日間の開催期間を通じて様々な思いが交錯することになった。

 最終的な数字は上記のように満足の行くものとなったが、セールの出足は非常に悪く、いったいどんな市場になるのやらと誰もが心配顔になるスタートだった。初日・2日目のセレクトセッションが終了した段階では、総売上げが前年比21.7%ダウンで、平均価格が前年比6.9%ダウン。前年は200万ユーロだったトッププライスが、今年は90万ユーロと、何とも寂しい数字が残っていたのである。

 すなわち、後半3日間の一般セッションで持ち直した末の「まずまず堅調」な指標だったのであり、逆に言えば、高い方のマーケットは大きな落ち込みを見せたのであった。

 高い市場の不調の原因が、プレイヤー不足にあることは明白だった。まず、この市場の常連だったマクトゥーム・ファミリーが、誰ひとりとして本人の参加がなかったのだ。それぞれ代理人を送り込んでの購買はあったものの、本人不在では思い切った買い物は見送られて当然である。

 かつてはトップエンドの主要なプレイヤーだった日本人も、セレクトセッションに限って言えば今年の購買はゼロ。フランス産馬の質が落ちたわけでは決してなく、むしろ上級馬のマーケットがここまで落ち着くのなら逆にお買い得であったのにと、残念に思う。英国の何人かの調教師やエージェントがすかさず上手な買い物をしていたのを目の当たりにしただけに、なおさらその思いは強い。

 高い市場が弱いということは、すなわち、将来の種牡馬としての価値も見越した「投機的」購買が少なかったことを意味する。その象徴として、セール2日目の24日(日曜日)などは、高額で取り引きされた上位10頭がすべて牝馬という、この種のセールとしては極めて異例の指標が出来上がった。

 さて、ヨーロッパのイヤリング市場はこの後、9月23日からアイルランドの「ゴフス・オービー」、10月1日からニューマーケットの「タタソールズ・ホウトン」と続くが、果たしてどう推移するか。特に、上質馬の揃った「タタソールズ・ホウトン」で、高い方のマーケットがどう動くかに注目したいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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