障害、平地の両GI制覇という大記録を作った同期・柴田大知騎手を直撃

2014年04月15日(火) 18:00

競馬の職人


 桜花賞、見事な馬っぷりと騎乗っぷり堂々とし貫禄すら感じ川田騎手の芯強さに感動しました。

 ハープスターとの大きな出会いから育っていったんでしょうね。4角まで20馬身ほどあり、コーナーから動きたくなるところを直線までグッと我慢。デビューからずっと手綱を取り、馬との信頼と呼吸をぴったり合わせる。まさに人馬一体の競馬だったと思います。

 でもそこへ持っていくまでに向こう正面から3角に差し掛かるところで内ラチにぴったりと付け、18番枠の大外の競馬ではなく、わずか1ハロンのロスを最小限にしていましたね。とってもいいものを見せてもらい、大きなサクラが咲き気分も爽快です。

 記録も多くでましたね。ディープ産駒の桜花賞馬はマルセリーナ・ジェンティルドンナ・アユサン・ハープスターと4年連続となり、40年ぶりの同一種牡馬産駒によるクラシック同一レース4連勝。そして松田博資調教師の4勝。ハープスターはベガの孫なんですね。それだけに喜びも大きいでしょう。

 池江調教師は開業10年ちょっとで現役最速の400勝達成、大久保龍志調教師は300勝。今年開業の石橋守調教師、高橋康之調教師ともに初勝利といくつもの記録が達成されました。

 今週は、皐月賞、そして中山グランドジャンプと土・日にGIレースがおこなわれます。今週もどんなドラマが生まれるのか、競馬から目が離せませんね。

 今週は、同期の柴田大知騎手にインタビューしてきました。大知もマイネルネオス、マジェスティバイオで中山グランドジャンプを連覇した後、マイネルホウオウで念願の平地GI・NHKマイルCを制覇し障害、平地の両GIを制覇するという大記録を作りましたね。

競馬の職人

同期の柴田大知騎手

常石 久しぶりやな。今日はよろしくお願いします。

柴田大 最近はなかなかゆっくり話をすることないですね。競馬場であっても「やーぁ」くらいですしね。今日は、何聞かれるかドキドキですね。

常石 改めて1年前のNHKマイルCを思い出して・・・・。こどもの日に自分の子供たちの前での勝利は最高のプレゼントでしたね。僕も感動し、もらい泣きし一緒に泣いてましたよ。あらためて「おめでとう!」

柴田大 ありがとうございます。今思うとグチャグチャで恥ずかしいですよ。10番人気だったのでまさか勝てるとは思っていなかったです。夢中で追っていたのでゴールに突っ込んだ時は、おたけびを挙げていましたね。なにがなんだかわからず頭の中は真っ白でしたからね。

あとでVTRを見ると恥ずかしいですし、反省することばかりですよ。周りから「行かなー」と言ってもらいウイニングランを思い出しましたね。今までは見ているばかりだったから。大歓声の中、ホウオウとのウイニングランは、嬉しさをかみ締めていました。涙が止まりませんでしたね。格好悪いですよ。

競馬の職人

NHKマイルC後のインタビューで涙を流す柴田大知騎手(撮影:下野 雄規)

常石 いえいえ最高に格好良かったですよ。僕は、1勝しかしていないけどわかるような気がします。口では一言では言えないけど、とにかくやったーって気分でうれしいよね。

ゴール前は、無我夢中で追って何がなんだかわからなかったというけど、併せに行った時、もたれているのを見て無理にあわせないで真っ直ぐに走らせていました。冷静な判断をしているなと感じましたよ。

柴田大 そうなんですよ。必死だったと思っていたんですが、レース中は、ホウオウとのレースに集中していましたね。返し馬の雰囲気もよかったしゲートに入る時も落ち着いていました。とっても賢い馬です。ここに来るまでは抑え切れなかったり入れ込んだり、メンコをつけたり、舌を縛るし馬は相当苦しかったと思う。でも1戦ごとに強くなっていってくれて精神面でも大人になったと思います。僕のほうが大人になりきれていなかったんですね。ゴールした瞬間からは、てんぱってしまいホウオウに恥ずかしいところを見せてしまいました。

常石 苦労をし障害レースにも挑戦しこの勝利は、大知をより大きい騎手にしてくれたでしょう。

柴田大 いえいえまだまだです。年間0勝が続いた時は、いろいろ悩んで鞭を置こうかと考えたけど、このまま騎手を辞めたくなかった。(家族も)生活も苦しかったと思います。とにかくこのままではいけないと思い攻め馬に多く乗せていただき1日7・8頭調教していました。障害レースは平地より馬に乗るチャンスはある。恐かったので中々勇気を出せなかったですがとにかく馬に乗りたい!と思って覚悟をきめました。この事を横山義行騎手に報告しに行ったんです。義行さんが「ホンマに危ないから大丈夫か?覚悟はあるか?命がけで乗るつもりでやれよ!」と真剣そのものの顔で言われ、覚悟を決めました。今でも忘れないです。障害レースを乗ると決めたからには、感触をつかむために乗馬苑に行って障害の練習をしました。レースに乗れるようになるまで3ヶ月くらいかかりましたね。これだけ練習をしても障害レースではじめて乗った時は恐いし緊張もしましたね。

常石 初めて乗った時は、恐いよね、ジャンプのときすごく高く伸び上がるような感じがするし降りる時は落ちるような感じがするもんな。でもやり始めると自分で馬を作って教えていき、うまく飛んでくれると気持ちいいもんね

柴田大 そうでしたね。

常石 マイネル軍団との出会いで11年にマイネルネオスで中山グランドジャンプ初勝利、それから翌年はマジェスティバイオで勝利、と連覇は凄いなー。

競馬の職人

マイネルネオスで中山グランドジャンプを制し左手を突き上げる柴田大知騎手(撮影:下野 雄規)

柴田大 いろんな方にお世話になって応援してもらえたおかげです。頑張りはこれからです。今始まったばかりですね。

常石 先週は、土・日と1勝ずつ勝って今年10勝目ですね。今週は中山グランドジャンプもありますね。騎乗の予定は?

柴田大 まだわかりませんが皐月賞には栗東の宮本厩舎のウインフルブルームに乗せていただきます。オンとオフの切り替えの上手い馬で仕上がりも順調なのでこっそり期待しています。

常石 楽しみですね。明日トレセンに取材にいくので調教をしっかり見ておきます。

柴田大 よろしくお願いします。僕も行きます。

常石 どんどん広がる柴田ワールドに未崎も帰ってきましたね。

柴田大 またライバルが一人増えて困るな(爆笑)よくやったと思う。嬉しいですよ。

常石 ホンマ偉いよね。僕ができなかった復帰をやってくれて嬉しいです。助手を経験し馬を作ってきた立場で馬に乗ってレースができるのは、いい経験をしたと思います。

柴田大 そうですよね。乗るだけではわからないこといっぱいありますからね。担当の厩務員や助手の意見は大事にしています。僕ももっと勉強しなくてはいけないこと山積みです。息子と競争しているんですよ。

常石 あっそうか。今年中学生だもんね。早いね。

柴田大 負けてられませんよ(笑い)

常石 最強のライバルですね。(笑い)

柴田大 12期生も最強です。

常石 そうみんなよく頑張ってるよね。ユーイチなんか世界のユーイチやもんな。

柴田大 だから頑張れるのかもしれませんね。もっと学ぶことがあるので一瞬一瞬を大事にし頑張ります。それから男泣きって言ったら格好いいけどグチャグチャ泣きは格好悪いので卒業します。つねちゃんのように笑顔でゴールできるように頑張ります。

競馬の職人

柴田大知騎手「つねちゃんのように笑顔でゴールできるように頑張ります」

常石 話は1日では語りつくせないですね。またゆっくり話できる日を楽しみにしています。

***

山あり谷あり苦悩した日がある分だけ嬉しさもあった大知騎手。今週の土・日は穴馬ねらいで馬券にからんできそうです。
やっぱり12期生は、おもしろいなぁ。最後に未崎騎手で12期生シリーズは終わりたいと思います。未崎騎手、復帰後初勝利待ってるぜ。

つねかつこと常石勝義でした。[取材:常石勝義/栗東]

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

新着コラム

コラムを探す