「自分の子どもを育てるようにしっかり育てます」今年開業の飯田調教師にインタビュー

2014年04月29日(火) 18:00

競馬の職人


 今週は待ちに待ったゴールデンウイークが始まりますね。お出かけの予定はあっちこっちお考えでしょうか・・・?競馬でもGIレースが6週連続となるゴールデンウイークが始まります。

 今週の“最強ステイヤー”を決める天皇賞・春は、凄いメンバーが揃いました。ゴールデンウイークの始まりはまず春の天皇賞から攻めてください。

 淀のターフ3200mを18頭が一気に駆ける勇姿は瞬きしている間なんてないですよ。ぴっかぴっかに磨き上げた容姿や筋肉のボリュームはボディビルダーの大会のようです。

 G1・4勝のゴールドシップ、オルフェーヴルと同期のウインバリアシオン、そして昨年のダービー馬キズナが出走予定。キズナとゴールドシップは初対決で、その2頭にウインバリアシオンがどう絡んでレースをするのか、また昨年3着の外国馬レッドカドーの存在は?・・・想像するだけでワクワクドキドキしてきますね。

 昨年のダービー馬キズナですが、4月27日の日曜日「情熱大陸」という番組で1頭の馬を競走馬にするため、それをサポートするためにいろんな人の手で繋いでいく“絆”の強さや、東北大震災があり名付けられた馬名でもある“キズナ”へ夢を乗せて走る姿を追いかけていました。

あらためてどんなことでもそうだと思いますが、特に競走馬はわが子を育てる様に丁寧に多くの人の手が関わり繋がってるんだなと実感しました。観ていて心がホット(温かく)になりました。

さて今週からは、今年開業された調教師を追いかけたいと思います。まずは、飯田調教師にスポットライトを。

常石 開業、そして1勝おめでとうございます。順調なスタートですね。

飯田 ありがとうございます。まだ始まったばかりでこれからが頑張りどころです。

常石 メイショウマンボというGI馬とお父さんの厩舎を引き継がれてよいことはありましたか?また何か変わったことはありますか?

飯田 よいことも悪いこともみんな引き継いでますよ。(爆笑)

ずっと助手として仕事をしていたので特に変化はないと思っていたけど、いざ引き継ぐと知らなかったことがいっぱいあります。それに何をするにも責任がかかってくるよね。

教えてもらうことも山積みです。だから厩舎のみんなとしっかりコミューケーションをとりながら馬のことや厩舎運営のことも勉強しています。

馬は個人担当にしているので1頭1頭飼い葉から始まり手入れも含め責任をもって仕上げていきます。

担当馬の事がよく理解でき、その馬の持つ良さを見つけてどんどん引き出して欲しい。個人主義になるのではなく責任を持つということは、チームの1本の柱になっていくということです。個々が強い柱になって飯田厩舎を盛り上げていって欲しいです。まずは、僕が倒れないようにしっかりふんばらないとね。(笑)

そして、新しいことも勉強しいっぱい取り入れていきたいと思っています。

常石 先輩、大黒柱なんですね。頼もしいです。じゃ僕も広報担当でそのうちの1本になれるように頑張ります。(笑)

飯田 そうだね、頑張って!(笑)

常石 調教についてはどうですか?馬をどんな風に育てていきたいですか?

飯田 2歳馬が入厩してくるとまずは馬の性格を早くつかむことかな。馬は集団動物だから集団調教していきながら個々を大事にする。例えば走った後は、個人担当なのでゆっくりケアをし、走ったことをねぎらう事を忘れない、とかね。

1頭だとよく走り時計も出るのに他馬がいると恐がって動けなくなることって結構あるでしょう。15-15くらいからはじめて、そのなかで個々の馬のリズムを自分自身で身につけていけるようになって欲しいと思っています。

そういった個々の見極めが大事だし、難しいよね。もっと勉強をしていかないとね。やることはいっぱいあるけれど、そうはいってもやること自体は難しいことは言ってないですよ。

スタッフみんなは父から譲り受けたベテランだからよくわかっているし助けてもらっています。

常石 騎手だった経験も役に立っていますよね。

僕は飯田先輩が勝利した2000年の産経大阪杯「メイショウオウドウ」とのレース良く覚えています。後方待機から勝ちにつながる追い込みはすごかったですよね。凄い落ち着いていてじっくり構えていましたもんね。人馬一体って言葉がぴったりだナーと感じました。

現在の管理馬はオウドウの馬主さんでもありますメイショウの冠の馬が多いですか?

飯田 そうやな・・・懐かしいな。つねちゃんよく覚えてるね。

競馬の職人

メイショウオウドウ(写真は2001年鳴尾記念)

今のマンボはモモカの子、そしてそのお母さんのアヤメ、と母仔3代にわたってメイショウさんにお世話になっています。うちの厩舎に預けてくれて嬉しいです。その分期待に応えられるようにみんなで頑張ります。

騎手としても乗せて頂き調教師として管理させていただくのは幸せだと思います。

エコにも取り組んでいるんですよ。特別なことをするのではなく普通家庭でやってることをしています。例えば水を出しっぱなしにしない。家庭で洗濯するときお父さんのTシャツ1枚だけ洗わないでしょう。

個人担当制で飼い葉から世話まで全てやるでしょう。その後の洗濯物も1回ずつになると水と電気代の無駄になるから何頭分かをまとめて助手が洗う。

がめつくするんではなく自宅でやってるくらいの節約をやってもらったらいいと思っています。時間も短縮でき、仕事もスムーズに運ぶでしょう。被災地などを思うと恵まれた環境の中にいるからね。ちょっとでもできることやっていかないと。

常石 僕も耳が痛いな。「電気つけっぱなし」・・・と。

パドックなどでの姿もちょっと違ってきたように思いますが?

飯田 馬は大事な商品です。お客さんにお披露目する場でしょう。だから礼儀正しい服装で気を引き締めて仕事ができるようにしています。

でもスーツは着ないんですよ。馬を扱ってると何があるかわからないからGパンに動きやすい靴でシャツにジャケットスタイルって決まってるでしょう。

仕事とオフのけじめをつけるように心がけています。

競馬の職人

常石 服装って大事ですよね。リハビリの先生にいつも言われています。服装がきちんとできている時は脳の動きがいいときです。僕もよくチェックします。いろんなこと教えていただき僕も勉強になりました。フアンのみなさんにメッセージをお願いします。

飯田 馬は集団で行動します。皆さんもファミリーで楽しんで頂きたいと思います。2歳馬もいい馬が入厩しています。自分の子どもを育てるようにしっかり育てます。応援してください。

常石 長い時間ありがとうございました。

***

飯田先輩の優しさとこだわりがいっぱいの厩舎運営のお話に魅了しました。これからも応援していきます。つねかつこと常石勝義でした。[取材:常石勝義/栗東]

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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