HBAトレーニングセール

2014年05月14日(水) 18:00

HBAトレーニングセール

HBAトレーニングセール


◆今年は札幌競馬場の改修工事のため函館競馬場でのセール開催

 去る5月13日、今年の2歳トレーニングセールは函館競馬場にて開催された。例年だと札幌競馬場を借用しての開催となるが、折から未だ札幌は改修工事が行なわれており、来る7月のリニューアルオープンまで使用できないため、遠く函館競馬場でのセール開催となったのだ。

HBAトレーニングセールの風景

函館競馬場で開催されたHBAトレーニングセールの風景

 私の住む浦河からだと函館まではざっと370キロほどある。所要時間にして6時間。今回は前日入りしたが、さすがに遠い。人間の移動でさえかなりの負担だから、セールに2歳馬を上場させる育成牧場関係者は大変な苦労であったろう。馬運車だと所要時間はもう少しかかるはずで、改めて北海道の広さを思い知らされた。

 今年は名簿上で205頭が上場を申し込んでおり、セールは1日ですべて終える日程となっている。公開調教は午前8時半から始まった。札幌と同様に、芝コースの内側のダートコースを使用し、基本2頭併せで向こう正面からスタートする。3コーナーを回った残り2ハロンから計時が始まり、1ハロンずつの時計がその場でアナウンスされる。

 前日の12日には、ひじょうに気温が上がったという函館だが、この日は朝から曇りがちで気温が低く、おまけに風が強かった。公開調教を見るためにスタンドに陣取っていると、西風が吹き抜け、体感温度がひどく低い。場内では毛布の貸し出しもあり、それぞれマントのようにすっぽりと被ってブルブル震えながら調教を見守るくらいの条件であった。

 最初は外のスタンドの椅子もかなり埋まっていた印象だが、時間を追うごとに寒さに耐えられなくなり、早々にスタンドの内側に“避難”してガラス越しに見る人が増えてきた。

 私事ながら、カメラを構えていると手がかじかみ、途中で手袋を装着したほどであった。公開調教は4クルーに分かれ、それぞれ22〜24組を数える。大半は併走だが、中には単走で走る馬もいる。基本的には育成牧場別にペアを組むため、名簿順とは関係なくバラバラにやってくる。騎乗者はほとんどそれぞれの育成牧場のスタッフで、“プロ”の騎手は少なかった。札幌で行われるセールの場合、門別競馬場から現役の騎手たちが大勢公開調教にやってきて騎乗するが、今年は同日に能力検査も実施されたため、道営騎手の姿は見られなかった。

 1クールが終了するごとに場場整備のハローがけが入り、わずかに時間が空く。その間、トイレに行ったり、中でコーヒーを飲んだりして、スタンドはガラガラになる。とにかく寒くて外にはいられないのだ。その間、私も上着をもう一枚取りに駐車場に戻ったほどであった。温かいコーヒーが体に沁みた。

 天気予報は曇り一時雨。どこかでほぼ雨に降られることを覚悟せざるを得ない予報だったが、幸いにも公開調教の行なわれた午前中は雨にもならず、時々日が差す程度の天候で推移し、正午には全馬が無事に走り終えた。ここを目標に仕上げてきている2歳馬ばかりなので、タイムは速い。終いの1ハロンで10秒台を出す馬も多く、ほとんどが2ハロン23秒台をマークしていた。2ハロンの合計で最高タイムをマークしたのは171番「アイカギの24」(牡、父タイキシャトル、販売申込者・飼養管理者ともに(有)山口ステーブル)の21秒76。

171番「アイカギの24」

2ハロンの合計で最高タイムをマークした171番「アイカギの24」

 また1ハロンだけでは35番「サンドティアラ24」(牡、父ファルブラヴ、販売申込者・石郷岡雅樹氏、飼養管理者・(株)セイクリットファーム)の出した10秒69であった。

 セール開始は12時半。205頭の申し込みに対し実際に上場されたのは183頭。定刻通りにセリが始まった。

 今回は、場内のパドックをそのまま使用し、上場馬が入ってきてスタンドの前の馬道上に立つ。それをガラス越しに見て、購買者が場内から競るという形である。パドック内の大型のビジョンに上場馬が拡大されて映し出される。鑑定人も場内でセールを進行する。

 函館競馬場でのセリは初めての試みで、その分特殊な形にならざるを得なかったものの、結果的には予想以上の盛況であった。すでに報道されているように、183頭(牡93頭、牝90頭)が上場され、137頭(牡68頭、牝69頭)が落札された。売上総額は8億7956万2800円(税込)。売却率は74.86%で、昨年の数字を16.84%も上回った。落札馬の平均価格は642万0166円。こちらも昨年に比べると81万円余の上昇となった。

 最高価格馬は36番「サムシングナイス24」(牡、父サクラプレジデント、販売申込者・飼養管理者ともに(有)グランデファーム)の2970万円(税込)。この馬はPOG取材時から注目されていた1頭で、4月7日にBTC1600mダートコースにて行なわれたビデオ撮りの際から出色の動きを見せていた。今回も2ハロンを11秒39、10秒77にまとめ、購買者の注目を集めていた。活発な競り合いの末、林正道氏が落札した。

「サムシングナイス24」

最高価格馬の36番「サムシングナイス24」

 なお、次回もう一度トレーニングセールについて書く予定でいる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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