南関東に現れた期待馬

2014年05月16日(金) 18:00


◆サミットストーンが圧勝した大井記念が持つ2つのポイント

 5月14日に行われた大井記念は、単勝1.2番の断然人気に支持されたサミットストーンが接戦の2着争いに5馬身差をつける圧勝。このレースは2つの点で画期的だった。

 まずひとつは、6月末に行われる帝王賞JpnIの前哨戦として、これまでの2600mから本番と同じ2000mに距離が短縮されたこと。もしかして直前までこの距離変更を知らなかったという方も少なくなかったのではないだろうか。恥ずかしながら筆者もこれに気付いたのは1か月ほど前のことだっだ。

 競馬場と同じレース名であり、また今年で59回目を迎える伝統の重賞で、今となっては数少なくなったダートの長距離重賞として親しまれてきただけに、距離短縮は残念という声も聞かれた。2月に行われている金盃を、逆に2000mから2600mにして、いわば大井記念と距離を交換する形になったのは、こうしたことに対する配慮だろう。

 たしかに2600mだったこれまでも、この大井記念をステップに帝王賞で好成績を残す馬もいるにはいたが、前哨戦としてはやはり距離は同じか、せいぜい±200m程度までが適当だろう。

 そういう意味で、今回のサミットストーンの2分4秒6という勝ちタイムは、タイムの出やすい稍重の馬場だったことを考えても価値のあるものだった。帝王賞の近年の勝ちタイムを見ると、2011年のスマートファルコンによる2分1秒1という破格のタイムを例外とすれば、2007年以降は2分3-4秒台での決着。今回のサミットストーンはゴール前で余裕があってのタイムゆえ、帝王賞で通用するかもしれないという予測がつく。

 サミットストーンの関係者にしても、4月1日の準重賞・ブリリアントCを9馬身差で圧勝したときから帝王賞を意識していたようで、そうした状況で前哨戦を本番と同じ2000mで戦えたことはよかったのではないか。

 もうひとつは、地方から交流重賞で互角以上に戦えそうな馬が現れたということ。先日行われたJpnIのかしわ記念は、地方馬の出走は3頭のみ。中央対地方という見方では、レース前から完全に勝負がついていたという状況で、結果もそのとおりだった。帝王賞も同じようなことになったら、地方競馬的にはまた盛り上がりに欠けるものになってしまうところだった。そうした状況でのサミットストーンの今回のレースぶりは明るい話題だ。

 サミットストーンは、中央準オープンで頭打ちになったような成績で昨年夏前に金沢に転厩。地元同士ではまったく相手にならずというレースぶりで連勝を続けたが、交流重賞の白山大賞典では勝ち馬から2.7秒差の5着、JBCは短距離のスプリントのほうに出走したものの1.8秒差の6着と、やはり一線級相手では力が足りないかという結果だった。

 年が明けて船橋に移籍後も、1月の多摩川オープン(川崎)5着、2月の報知グランプリC(船橋)2着と、南関東では地方重賞で上位を争うことができるかどうかというレベルに思われた。変わったのはダイオライト記念でニホンピロアワーズ、トウショウフリークに続く3着と好走してからだろうか。

 競馬では実戦で鍛えられる部分も多く、相当な素質を持った馬でも、それなりのレベルの馬と、それなりの厳しいペースでのレース経験を積まないことには、力は発揮できない。その結果が、サミットストーンのブリリアントCから大井記念の圧勝だったのではないか。帝王賞が楽しみになった。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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