衆目一致のチャンピオン/安田記念

2014年06月09日(月) 18:00


◆逆転を生んだ「最後の1ハロン」

「1分36秒8(小雨。不良馬場)」の勝ちタイムが物語る、パワーと底力のレースだった。

 GIとなった1984年以降、ハッピープログレスが1分37秒8(雨・記録は良馬場)で勝った最初の1984年、タイキシャトルが勝った1998年の1分37秒5(雨・不良馬場)に次ぐ遅い勝ちタイムは、近年では1分31秒台も珍しくない勝ちタイムと約「5秒前後」もの差がある極度にタフなコンディションだった。

 ふつうの重馬場程度なら、それを味方にできる馬も出現する。でも、今回はみんなに大きなマイナスをもたらしたことは明らかであり、残念ながら失速したグループは、これだけ馬場コンディションが悪くなったら、今回は「仕方がない」。反動が出ないことを祈りたい。

 不良馬場のレースの中身は、「前半35秒1-47秒1・後半49秒7-37秒7」=1分36秒8。

 3歳ミッキーアイルが行くと、後続の先行タイプも果敢に追走したため、この馬場にしては少しも楽なペースではなく、前半1000m通過は59秒1であり、1200m通過は1分10秒9。レース中盤までは良馬場とのタイム差は「2秒ちょっと」しかなかった。  不良馬場にしてはペースがきついところへ、4コーナー手前からリアルインパクト(13着)、ダノンシャーク(4着)、クラレント(10着)などが、早めに逃げるミッキーアイル(16着)に並びかけたことも重なり、1400m通過は「1分23秒0」である。この時点でもタイム差は約3秒しかない。直前の1000万下の1400mの勝ちタイムなど、安田記念の1400m通過より約2秒も遅い1分24秒9にとどまっている。

 そのため、安田記念の最後の1ハロンは「13秒8」。急激に落ち込んだ。失速、逆転が生まれたのはこの最後の200mである。もう失速して最後の1ハロンでは止めてはいたが、ミッキーアイルの前後半は「47秒1-51秒7」=1分38秒8となった。

 良馬場より5秒近くもタイムがかかった不良馬場のなか、早め早めに先行して残り200m地点では先頭。4着に粘ったダノンシャークの前後半は推定「47秒4・50秒0」=1分37秒4(上がり38秒2)である。結果、0秒6負けはしたが、ダノンシャークのレースの中身は非常に優秀である。もう1頭、好位につけ、直線残り200m-300m地点では先頭に並びかけた6着グロリアスデイズのレースバランスは推定「47秒6-49秒9」=1分37秒5(上がり38秒1)となる。差しタイプばかりが上位を占めたから、ともに完敗ではあっても、負けたグループではダノンシャークとグロリアスデイズの健闘は特注である。

◆勝ったことがチャンピオン・ジャスタウェイの「底力」

 勝ったジャスタウェイ(父ハーツクライ)は、抜け出した伏兵グランプリボス(父サクラバクシンオー・16番人気)を、ここではめったなことでは負けられない力関係を示すように、ゴール寸前の2完歩くらいで最後に捕らえた。実力の差、底力の違いでの差し切りである。着差こそわずかだが・・・

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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