「信頼されるようにやって行きたい」石橋守調教師にインタビュー

2014年06月10日(火) 18:00

競馬の職人


オークス・安田記念・そしてダービーも見事ハーツクライ産駒でしたね。

その中でも際立つのが世界ランクトップの称号を持つジャスタウェイでした。大雨で泥んこの馬群のど真ん中を突き抜けてきたときは、圧巻でした。芯のゆるぎない強さに感激しました。

そしてダービーもすごかったです。念願のダービー制覇を成し遂げた橋口調教師に、何度お会いしても「感無量です」と深々と会釈しながら話してくれます。

19回も馬をつくりダービーへ送り続けることの方が凄いことだと改めて思いました。20頭目で念願達成、ダービー制覇とはそれだけ難しく馬、人間にとっても思い入れの深いレースだと実感しました。また、ワンアンドオンリー・横山典弘騎手・前田幸治オーナー・皇太子様が同じバースデー、という四つ巴の偶然もすごいです。2月23日はワンアンドオンリーの日になりそうですね。

競馬界にまた新しい旋風が・・・・ハーツクライ産駒で凱旋門挑戦も楽しみになってきました。

G1デーも残り宝塚記念のみ。今週からサマーシリーズに突入し早くも新馬戦が始まりました。その中から次のダービー馬に育っていくんですね。

今年も新しい力が参入し競馬界という組織が活性化します。今回は新調教師・石橋守調教師に密着しました。

常石 今日は、よろしくお願いします。ダービーも終わりましたが、先生も騎手時代にはダービー制覇をされていますがダービーへの思い入れも大きいですか?

石橋 そうやな、石橋っていったらメイショウサムソンでダービー制覇、皐月賞も制し2冠を取ることが出来た。ダービーを勝てたことは名誉なことだと思ってるし、確かに感激し思い入れも大きかったけど、それだけではないよね。

この世界で30年もやっていたら、あの時は、・・・などいっぱい思い出しますわ。ダービーであろうと新馬戦であろうと乗り役はいつも真剣勝負やし、新馬戦から1個づつ勝ち上がっていかないとダービーには出られないからね。サムソンも新馬戦から乗り続けていた馬。その馬ではじめてのG1を捕ることが出来た実績は大きいね。

乗り役は厳しいから1レース1レース大事に乗っていかないと次はないからなー。それは、つねちゃんも一番よく知っているとおうけど。

常石 はい。失敗して十分に痛い思いもしていますし、こつこつ乗せていただいて嬉しい思いも経験させてもらいました。

石橋 そうだよね。だからこの仕事は、奥が深く面白いんだよね。

常石 新馬戦のときは、やっぱり緊張しました。はじめてG1に乗せていただいたときもガチガチになっていると(中尾正)先生がしっかりタテガミもって振り落とされんように回って来い、とアドバイスしていただき緊張が和らいだなと思いましたが、先輩は緊張はあまりしないほうでしたか。

石橋 ダービーは1番人気だったからかなりのプレッシャーだったなー。それに2冠もかかっていたから、その緊張をさりげなくほぐしてくれたのが河内先生でした。当日、河内厩舎の馬も東京のレースに参戦し僕が乗せてもらっていました。

レース後に先生が「さあ、今日の仕事がおわったぞー。後は1レースだけやから気楽に乗ってこいや」と声をかけてくれました。その一言を聴いた瞬間、肩の余分な力がスーッと抜けました。やっぱり河内先生は、なんかもってるよな。(笑い)

常石 騎手や調教師って感じがしない田舎のおっちゃん、と思ってしまう不思議な先生ですよね。(笑い。ごめんなさい)それだけ親しみやすい感じの先生だと思ってしまいます。

石橋先生が調教師になられ河内調教師に応援メッセージをお願いすると、「あー頑張ってるよ。自分の思いどおりにしたらいいと思うよ」「エー、それだけですか」と言うと、「ライバルになっていくからこれ以上はいえません」とにこやかな笑顔で話してくれました。それだけ期待しているんだなーと実感しお互いの信頼関係があるんだと思うと嬉しかったです。お二人は強いキズナでつながっているんですね。

石橋 実はそんな関係でー、といいたいが気持ち悪いな。(苦笑)まだまだ教えてもらうことが山積みです。始まったばかりやからね。

常石 調教にも乗られているんですか?

石橋 水・木は乗っていますね。馬に乗れるうちは、乗っていたいです。見るのと乗るのとレースとは違うからね。その当たりをしっかり見極めていきたいです。

常石 やっぱり騎手の経験が活かされているんですね。

石橋 馬を見る目はまだまだやからね。

常石 牧場には、よくいかれるんですか?

石橋 馬の育った環境は大事だと思っている。時間の許す限り牧場に出かけて馬を見る目を養って行きたい。勉強すること山ほどあるわ。

常石 助手さんやスタッフもベテランの方たちなので調教などの運営は、任せているんですか。

石橋 みんな協力してよくやってくれています。2頭担当制にして担当の馬には責任を持つ。生き物を預かるからには粗末には扱えないし、それぞれ責任を持つことが最低条件だと思う。基本をしっかり押さえて馬の持つ本質を見極められるようになっていかないといけないと思っています。

勝つためだけではなく、後のケアも大事だしね。故障した時の治療の方法によって生きるか死ぬかの場面もあるわけですし。異変にすぐに気づき早期発見を心がけたいです。スタッフには生き物を扱う基本をしっかり学び積み重ねていってほしいと思っています。

また、組織の長としてスタッフは勿論、競馬関係者からも信頼されるようにやって行きたいとも思っています。

常石 騎手時代に多くの経験をされていますよね。それも活きてくるんじゃないですか。

石橋 どれだけ役に立つかわからないけどせっかく経験したことを活かさないとね。

常石 日本人騎手としてはじめてドバイ遠征にも行かれ、マカオジョッキーシリーズにも出場しマカオの重賞、オータムトロフィー優勝。地方競馬の南部杯や帝王賞も勝っているでしょう。経験が豊かなので調教師として活躍されるのが楽しみです。

石橋 馬に乗る側と作る側は違うので難しいですよ。だからやりがいもあり楽しみもあるんですがまずは1歩からです。

常石 2勝されたので3歩からですね。

石橋 そうなるんか(爆笑)

常石 初勝利がメイショウネブタ、鞍上が武幸四郎騎手ですね。

競馬の職人

初勝利を挙げたメイショウネブタ

石橋 大変お世話になってる松本オーナーの馬で勝つことができて嬉しいです。

常石 初勝利を挙げた武幸四郎騎手や公私ともに仲の良い武豊騎手、同期の柴田善臣騎手、からメッセージを頂いてるんですよ。

***

武幸四郎騎手 石橋先生おめでとうございます。僕が初勝利をあげることができ嬉しいです。これからも2勝3勝と上げられるように頑張るので乗せてください。

ネブタは未勝利を勝ったことで短距離だけではなくマイルも大丈夫だと思うから秋が楽しみですね。先生のことは、子供のころから知っているので兄貴分として尊敬しています。仕事は真面目だし職人って感じがするので頼もしく思う。成功して欲しいです。よろしくお願いします。

競馬の職人

武幸四郎騎手

武豊騎手 僕とそんなに歳は変わらないけど着実に前に進んでるのは、尊敬します。活躍楽しみにしています。

柴田善臣騎手 同期なので期待してるよ。凄いやつだよ。

***

常石 このメッセージをみて改めて先生の人望の厚さを感じました。最後にファンの方にメッセージをお願いします。

石橋 石橋厩舎に所属する馬のファンになって競馬場に見に来てくれるような馬を育てていきたいです。そして競馬の面白さを伝えていきたいです。レースに勝つのは、その馬の通過点だと思うのでその後も追いかけてもらえるような馬作りを頑張っていきたいと思ってます。応援よろしくお願いします。

常石 今日は長い時間ありがとうございました。

***

石橋先生と話していると競走馬として産まれてきたからには勝つことは勿論だけれど、そこへ行くまでの過程だったりその後の生き物としての扱いの大事さや奥の深さを教えていただきました。

職人肌やな、とあらためて実感しました。河内厩舎で調教師の勉強をされたことが僕にもなんとなくわかるような気がします。つねかつこと常石勝義でした。

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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