八戸市場

2014年08月06日(水) 18:00

八戸市場風景

八戸市場の風景


売却率、平均価格ともに前年を上回り、この上場頭数の少なさを考えれば上々の結果であった八戸市場

 8月5日(火)、八戸市場が開催された。今年は上場申し込みが少なく、名簿上では38頭にとどまった。昨年は70頭の上場馬がいたことを考えれば、半分近くまで激減したことになる。原因は様々あるが、ひとつには開催時期が昨年の7月上旬から約1カ月遅くなり、主取りになっても8月下旬に北海道で開催されるサマーセールへの上場が不可能になったこと、それに加えてより高額での取引を願う生産者が、あえて地元市場を避け、最初から北海道の市場に照準を合わせる例が多いこと、などが挙げられよう。

 38頭まで減ってしまったことで、購買者の減少なども懸念された。また猛暑のこの時期の気候も懸念材料のひとつであった。

 しかし、前日まではかなりの高温多湿で「うだるような暑さ」に悩まされたそうだが、一転して5日当日は、終日曇りがちに推移し、気温は思ったほど上がらず、北海道から現地入りした私たちにとってはここ数年の間で最も涼しい市場となった。

 上場馬38頭のうち、半数は県外からの遠征組である。北海道から出張してくる1歳馬がいなければ市場が成立しないと言われるくらいに近年は北海道の1歳馬が多くなっている。

 午前9時45分より比較展示が始まった。上場頭数が少ないにもかかわらず、展示は3回に分けて行なわれた。1回あたり12頭〜13頭が、たっぷり30分をかけて展示される。のみならず、当初の予定では、それぞれの展示の後、30分間の「休憩タイム」まで設定されており、かなりゆったりとした日程になっていた。

比較展示風景

比較展示風景

 しかし、いざ始まってみたら、そこまで引っ張ることもなく、それぞれの展示時間は30分+αで、馬の入れ替えなどに多少ロスがあったものの、展示は休むことなく続けられた。それぞれ、展示が終わると会場を時計回りに各馬が一列縦隊で2〜3周し、最後に展示会場奥からセリ場に向かって「常歩」で1頭ずつ歩いてくる。昨年まではこの場面は速歩だったが、引き手の疲労度や平均年齢(日高に比べるとやや高い印象であった)など考慮して、走るのを止めたのかも知れない。

ミニスタークイン

最高価格となったミニスタークインの常歩場面

 12頭〜13頭の展示では、あっという間に購買者が一周してしまい、やや時間を持て余すほどであった。しかし、購買登録者は約50人いたという。毎年見かける顔が多く、決して数は多くないものの、八戸市場を愛する人々が一定数いるのも事実のようだ。

 比較展示終了は11時20分頃。セリ開始は12時半と告げられた。昼食タイムには予め配布されたお弁当引換券を使って、場内の一角に用意されたブースに並び、お弁当と「せんべい汁」が配られる。地元名産のせんべい汁は、しょうゆ味ベースのお吸い物の中に麩に似た食感のせんべいが入っており、毎年ここで来場者に供される。いつもの年ならば、この時間帯には暑さがピークを迎えるが、今年は曇っており時折ポツポツと小雨が降ったり止んだりの天候だったため、涼しくて助かった。

地元名産のせんべい汁

昼食タイムに配られた地元名産のせんべい汁

 せり開始の少し前から場内に人が集まり始めた。山内正孝・青森軒軽種馬生産農協代表理事組合長が冒頭あいさつに立つ。その後すぐに1番の上場馬が入場してきた。

 八戸市場は、北海道でいう「お台付け方式」で行なわれるが、今年も生産者(販売申込者)の届けているお台に達しない価格から超えがかかり、しばしば鑑定人が台上から降りて生産者と“相談”する場面が見られた。せりはいきなり主取りが4頭続き、やや低調なスタートとなったが、途中で徐々に売れ出し、価格はそれほど高くならないものの、予想していたよりもずっと活発な印象であった。300万円台、400万円台で落札される馬が次々に現れ、複数の購買者間で激しい競り合いになる上場馬も出てきた。

 終わってみれば、36頭の上場馬のうち、半数の18頭が落札され、総額4711万円(税抜き)を売り上げた。1頭当たりの平均価格は261万72222円。さすがに総額では前年を下回ったものの、売却率、平均価格ともに前年を上回り、この上場頭数の少なさを考えれば上々の結果であった。

 最高価格馬は牡が36番「オヘソノタカラモノの2013」(父ナカヤマフェスタ、母オヘソノタカラモノ、母の父サクラバクシンオー、鹿毛)の420万円(税抜き)。(株)タイヘイ牧場からの上場馬で落札はJRA日本中央競馬会。牝は35番「ミニスタークイン」(父シニスターミニスター、母エビスハルカ、母の父ホワイトマズル、鹿毛)の580万円(税抜き)。生産は浦河・山田昇史氏、飼養管理者(株)門別牧場で、落札はJRA日本中央競馬会。なおこの市場でJRAは計3頭を落札した。また、常連の森中蕃氏やビッグレッドファームなども落札していた。

オヘソノタカラモノの2013

牡馬最高価格馬のオヘソノタカラモノの2013

ミニスタークイン

牝馬最高価格馬のミニスタークイン

 市場を振り返って山内組合長は「正直なところどうなるかと心配していましたが、八戸市場を愛する方々にも支えられ、この上場頭数の割にはひじょうに良い結果となったことを感謝申し上げます。幸い、今年度の県内生産頭数は昨年よりもやや増加していますし、来年は開催時期を7月に移して今年以上の結果を出せる市場にして行きたいと考えております」とコメントした。

 来年の開催についても早々に山内組合長が明言したように、異例の少頭数は今年だけのことにしたい。ぜひ来年はある程度の上場頭数が確保されるよう願うばかりだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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