水清ければ大魚なし

2014年10月02日(木) 12:00


「大筋を押さえる」こと

 小さなことまでとがめていたら人は集まってこない。人が集まってこなければ、物事を成し遂げるのは困難だという。これに類する言葉としては、「水清ければ魚棲まず」が近い。中国の古典では、「水清ければ大魚なし」となるのだが、いずれにせよ、清すぎるのは考えものだとなる。これに自分流の解釈を加えれば、「大筋を押さえる」それでいいではないかということになる。心にゆとりがあれば、人は、だいたいよければいいではないかと思うものだから、肝心なのは「ゆとり」だ。大筋を押さえる、そんなゆとりが感じられるとき、物事はいい方向に進んでいく、そういうことだ。

 今年のダービー馬ワンアンドオンリーにはそんな雰囲気が漂っているようだ。神戸新聞杯を前に、「溌剌(はつらつ)としている、見ていて気持ちがいい」という声が陣営から聞かれていた。レースでは、後方から3、4頭目でダービーより後方の位置取りだったが、横山典弘騎手は「これがいつものこの馬の競馬」と言い、3コーナーを過ぎてからゴーサインを出し、そこからずっと長くいい脚を見せてくれた。中段にいた上がり馬サトノアラジンは早めに来られて苦しくなったが、横山騎手の「ゆとり」と「大筋を押さえる」戦い方が大きくまさっていた。外から迫ってきたサウンズオブアースに交わされかかったが、よく凌いで勝てたのも、「ゆとり」によるところが大きい。使ってさらに良くなるタイプのワンアンドオンリーが菊花賞でどんな戦い方をするか。人馬に気負いがなく、「大筋を押さえる」そんな気分で立ち向かえば、たとえ小過があっても許して前進できそうな気がする。

 ダービー馬が秋の本命、どうやらそうなりそうだ。その「ゆとり」、馬に寄せる信頼からくるものだから、最後は当日のコンディションに尽きる。スプリンターズSも、新潟コースを意識しすぎるのではなく、だいたいよければいいという「大筋を押さえる」ぐらいの気分で立ち向かえるものがいいのではないか。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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