祝3000勝達成!新潟廃止からの長かった道のり

2014年11月18日(火) 18:00

向山牧騎手

向山牧騎手


向山牧騎手「(オーディンを)あそこで勝たせてあげたかった。勝ったレースよりも、鮮明に覚えてますね」

 10月30日、笠松第11Rを勝利して、向山牧騎手が地方通算3000勝を達成しました! 公営・新潟競馬のトップに君臨していた向山騎手ですが、廃止後に移籍した笠松競馬では、騎乗馬が集まらず何度も辞めようと思ったそうです。3000勝という偉業を成し遂げた今、これまでの道のりを振り返っていただきました。

赤見:3000勝達成おめでとうございます! すごい数字ですね。

向山:通過点ではありますけど、なんというか…、ずいぶん長い間やってるんだなって、しみじみしましたね。いろいろあって、何度も騎手を辞めようと思いましたけど、なんとか思いとどまって、ここまでこられて良かったです。

赤見:いろいろというのは、具体的にはどんなことですか?

向山:まずはやっぱり、新潟の廃止です。騎手を続けたいなと思ってましたけど、年齢制限で僕は南関東には行けなかった。移籍出来る競馬場がなければ、辞めるしかないなと。そんな時、安藤勝己さんが僕の親戚と仲がよくて、その縁で『笠松に来ないか』って声を掛けてくれたんです。誘ってもらってすごく嬉しかったし、他に選択肢はないですから、迷わず返事しました。

赤見:地方の競馬場もそれぞれの雰囲気やカラーがありますから、移籍した時は大変だったんじゃないですか?

向山:今だから言えますけど、もうね、僕は全く合わなかったんですよ。これまでは、馬に乗って結果を出せば乗せてもらえたんですけど、笠松は営業しないと乗せてもらえない。僕は全然営業が出来ないので、調教さえ乗れなかったんです。営業したり人間関係を作るのも騎手の仕事だとは思うんですけど、なかなか出来なくて…。もうちょっと営業が出来れば、もっと成績が上がるのかなとは思いますけど、それはそれでいいかなと。信頼して乗せてくれる人の馬を精一杯乗るのが、自分には合っているんだと思います。

赤見:移籍した頃の成績は、新潟で9回リーディングを獲った頃とはかなり落差があったんじゃないですか。

向山:そうですね。もう本当に、何度も何度も辞めようと思いました。愛想も悪いし、営業出来ないしで、僕のことを嫌いな人はいっぱいいると思いますよ。でも結局のところ、僕は馬に乗るのが好きなんですよ。だから辞められなかったです。そうこうしているうちに、高崎が廃止になって、川嶋弘吉先生が移籍して来られて。主戦として乗せてもらえるようになって、そこから流れが変わりました。他の厩舎からも少しずつ声が掛かるようになって、今の成績に繋がったんだと思います。

赤見:昨年は初のリーディングに輝きましたし、今年も2位に付けてリーディング争い真っ只中。とても49歳とは思えないほど、パワフルな騎乗を続けていますよね。

向山牧騎手

向山騎手「若い連中から、「じいさん、早く辞めて」って言われます(笑)」

向山:若い連中から、「じいさん、早く辞めて」って言われます(笑)。若い頃は、とにかく『勝ちたい勝ちたい』って気持ちが強かったんですけど、その気持ちが馬の邪魔になっていた部分もあると思うんです。今ももちろん勝ちたいですけど、冷静に乗れるようになったのかなと。それにこの年齢になると、誰も何も言わないんですよ。だから、自分でいろいろ考えていかないと、置いて行かれるっていう不安はあります。これまでの笠松は、先行しないと勝負にならなかったけど、今は追い込みも利くんです。開催によって馬場状態も違うし、日々研究していかないと。今でも必死ですよ。

赤見:向山騎手というと、剛腕とか、力強い追い込みっていうイメージです。

向山:それ、よく言われるんですけどねぇ、自分としては先行する方が好きなんですよ。前に行ってもたせる方が好き。忘れられないレースの一つに、オーディンの平安ステークス(1994年2着)があるんですけど、あの時も逃げてましたから。

赤見:オーディンのことは、今でも思い出しますか?

向山:思い出すというか、今でもファンの方から言われることもありますし、自分としては絶対に忘れられないレースです。中央の重賞に挑戦して、2着に頑張ったって言ってもらいますけど、自分の中では納得がいってなくて。もう少し追い出しのタイミングを遅らせたら、なんとかなったんじゃないかって。あのレースでは、馬が本当に全能力を発揮してくれたと思うんです。その後の成績が良ければまだ諦めも付くんですけど、あの後パッタリ走らなくなってしまって…。だからこそ、あそこで勝たせてあげたかった。勝ったレースよりも、鮮明に覚えてますね。

向山牧騎手

向山騎手「(1994年の平安Sは)今でもファンの方から言われることもありますし、自分としては絶対に忘れられないレースです」

赤見:それでは、ファンの方にメッセージをお願いします。

向山:今までは3000勝を目標にやってましたけど、これからは4000勝に向けて頑張ります。今49歳ですけど、まだまだ上手くなりたいし、まだまだ乗っていたいです。60歳でも現役の、年金ジョッキーを目指します!!

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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