2014年12月12日(金) 18:00
前回の10月の東京2000mでは、「右にもたれるようなところがある」とされた不安が露呈し、最後の直線に向くと大斜行。最後のゴール前は外ラチ沿いにまで寄ってしまった。まるでドイツダービーのシーザムーン(父シーザスターズ)を連想させるような破天荒なレースになってしまったが、斜めに走りすぎて鞍上の横山典弘樹手が少し矯正するようになった最後の1ハロンは12秒台にラップが落ちたが、1800m通過は1分45秒5。苦しくなってバテて斜行したのではないように映った。少し矯正しただけで、無理に進路を直さなかったのは、足元にかかる負担や、先につながる精神面を考慮した素晴らしい騎乗だった気がする。
競走でまっすぐ走るのに越したことはないが、サンデーサイレンスの若い産駒が全力疾走になるとなぜか斜行したように、また、幼い生徒の運動会で、まっすぐ走る子供より一所懸命になると少々斜めに走ってしまう子供のほうが実は速かったりする例があるように、サラブレッドとてそんなにみんながバランス走法は取れないことを思い起こしたい。
5戦5勝のエイシンヒカリは、デビュー戦になった今春4月の京都1800mの3歳未勝利戦を1分45秒7で独走した。翌週の未勝利の勝ち馬リリコイパイ(父ディープインパクト)は1分48秒9(3秒2差)であり、そのリリコイパイは続く500万を快勝している。ふつうの馬とのレベル差は推して知るべしである。
エイシンヒカリのレースの1000m通過59秒0。レースの上がり3ハロンは超高速馬場で「11秒7-11秒6-11秒3」だったが、好位から楽々と抜け出し、最後は抑えながら11秒3の地点で後続を5馬身も離している。
1000m通過が0秒5速い厳しい流れだったのは翌週の古馬1000万特別。勝ち時計は1分45秒1だった。エイシンヒカリの後半は古馬1000万とそっくり同じラップであり、古馬の最終ハロンは11秒5。デビュー戦のエイシンヒカリは11秒3。その1000万特別の勝ち馬はイリュミナンス。条件替えで6月の阪神1800mの1000万に再び出走すると、対戦することになったのが3戦目の3歳エイシンヒカリである。エイシンヒカリはイリュミナンスに0秒8に差をつける圧勝だった。最初からオープン級だったのである。
3代母は、アルゼンチンのサンデーサイレンスと形容されたサザンへイロー(父へイロー)の母と姉妹の間柄。その牝系には、シーバード、セクレタリアト、ストームキャット、ノーザンダンサー、マームード、ネイティヴダンサー、グロウスターク、フォルティノ……などの血が、これでもかという状態で配されている。まるで世界の歴史を飾る名馬総出演のような見境のないファミリーだが、ひょっとするとエイシンヒカリはそういう名馬の血を少しずつ受けているかもしれない。まだ、これから強くなることを期待したい。
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柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。
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