週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2004年03月02日(火) 12:28

 2月25日(火曜日)にフロリダで行われた「ファシグティプトン・コールダーセール」は、総売り上げが前年比43%増の4158万ドル、平均価格が前年比40%増の29万2859ドル、中間価格が前年比13%増の17万ドル、昨年43%だった主取り率が今年は36%と、全ての指標が好転する盛況に終わった。ことに、アメリカ人バイヤーがここ1〜2年に比べて明らかに強く、この国の景気が一時の低迷を脱して上昇期に入った事を印象付けられた。

 更に、トップ・マーケットは相変らず、そうした下々の景気の動向とは掛け離れた別世界の展開を見せ、2歳セール史上のワールドレコードが2度も更新される狂乱の市場となった。

 セールス・トッパーは、上場番号229番の父フサイチペガサス・母ヒドゥンストームの牡馬。下見の段階から馬体の良さが際立っていた1頭で、1回目の公開調教で1F/10.2秒の好タイムをマークした時点で「最高価格はこの馬」と評判になっていた逸材だった。

 クールモア、シェイク・モハメド、サティッシュ・サナンという、プレミアセールの高馬争奪戦ではお馴染みの顔触れが、せり会場の四方から次々と高額ビッドを打つ中、不退転の姿勢で臨んだ日本の関口房朗オーナーが450万ドルという破格値で購買に成功した。アンダービダーは、ボブ・バファート調教師とともにセールに臨んだサティッシュ・サナン氏だった。父と同じ服色を背負う事になった最高価格馬は、これも父と同じニール・ドライスデール調教師のもとで、05年のケンタッキーダービーを目指すことになる。

 2番目の高馬は、上場番号145番の父スティーヴンゴットイーヴン・母ブラックタイビッドの牡馬。父は現役時代G1ドンHの勝馬でこの世代が初年度産駒となるフレッシュマンサイヤーだが、本馬に限らず動きの良い子が多く、今後に注目したい若手種牡馬である。2歳セールにおけるこれまでのワールドレコード(03年のバレッツマーチセールでシーオヴシークレットの牡馬が記録した270万ドル)を更新する310万ドルで、シェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソンが購買。ただしこのワールドレコードは、寿命わずか2時間半ほどという儚いものだった。ちなみに、ここでもアンダービダーはサティッシュ・サナンだった。

 そんな中、日本人によると見られる購買は20頭。日本人購買馬の平均価格は43万7千ドルだった。ただし、アメリカで走る最高価格馬を除くと、残る19頭の平均価格は22万3千ドル。昨年のこのセールにおける日本人購買が、平均20万6千ドルで19頭だったから、ほぼ前年並みの購買と言って良いだろう。

 ただし、トップエンドの市場が極めて強かったのに対し、中間価格以下の価格帯は比較的需要が薄く、コスト・パフォーマンスという点では、今年の日本人購買馬は相当高いレベルにあると思う。

 2回目の追い切りの強さが抜群に良かった上場番号50番、1回目の追い切りで1F/10.4秒の時計を楽走で出した上場番号94番、1回目の追い切りで1F/10.0秒を余裕残しでマークした上場番号96番、1回目の追い切りの動きが目立った上場番号140番、2度目の追い切りで芝に入って1F/10.0秒の最速時計をマークした上場番号156番、トモっ張りの良い好馬体が目についた上場番号264番など、20万ドル以下の価格で購買された馬にも好素材が多いことを、ぜひ付記しておきたい。

 なおセール終了後、コンサイナーとの直接交渉で更に2頭が日本人によって購買されたことが確認されており、04年のファシグティプトン・コールダーを通じて日本へ渡る馬は、21頭になる模様である。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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