■第2回「トラブル」

2015年02月23日(月) 18:01

「やっちまったって、何をだ」

 伊次郎が訊くと、厩務員の宇野が目をしばたたかせた。

「おれが曳いてたトクマルが、川上厩舎のディープ産駒を蹴っちまって……」

 ――よりによって、嫌なヤツの馬を。

 いつも皮肉な笑みを浮かべた川上の顔が浮かんだ。

「相手の怪我は?」
「よ、よくわかんねえ」
「歩様は」
「どうだろう。普通に歩いてたけど……」

 ならば問題ないだろう。

「トクマルはどうした」
「センさんに口を持ってもらってる」
「え!?」

 そっちのほうが危ないと思った。・・・

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島田明宏

作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊ギャロップ、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。趣味は読書と読売巨人軍の応援。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。最新刊はテレビドラマ原作小説『絆〜走れ奇跡の子馬』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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