好位差しの形で/京王杯SC

2015年05月15日(金) 18:00


予想されるスローに近い流れ

 今年の春は、桜花賞が「50秒0-46秒0」。実に前後半の差4秒0。前半は半世紀前にもみられない超スローだった。古馬のマイラーズCも歴史的なスローで「47秒7-44秒9」。前後半の差2秒8。先週のイキのいい3歳馬のNHKマイルCも「47秒2-46秒3」。みんなが予測したとおりのスローペースだった。

 スローペースが悪いわけではない。持ち味を生かすための作戦というものがある。サンデーサイレンスの血を持つ馬が多いから、スローでも控えた方がいいことも多い。

 物足りないのは、多頭数だと直線で馬群が固まり、明らかに脚を余す馬が続出することと、「流れてくれなかった」など、能力を出し切れなかった敗因を他の人馬のせいにするコメントが出てしまうことである。

 古馬マイル路線の頂点にある安田記念を3年連続して先導し、マイルチャンピオンSでもレースを作り、マイラーズCを連勝したシルポート型がいると自然にレースは盛り上がるが、行きたがるのを引っ張ったり、なだめ通しだったりは、日本の1400mや、1600mではレベルの低いレースということになるだろう。

 今週は、土曜16日の「京王杯SC」1400mも、日曜17日の「ヴィクトリアマイル」1600mも緩い流れに陥る可能性が非常に高い。陣営や騎手は、ファンよりはるかに位置取りや全体のペースを考えているから、「このメンバーなら…」と積極策に打って出る人馬がいるはずだが、それでも緩いペースは避けられないだろう。

 日曜のヴィクトリアマイルは、たとえスローでも牝馬特有の「切れ味勝負」になりそうなので、流れはそんなに重要ではなくなるかもしれないが、土曜の京王杯スプリングCはスピード能力最優先の1400mである。それが近年の傾向どおり「スローに近い流れ」で展開するとなると、難しくなる。なにせ全馬の最近の成績を見てのとおり、前3戦で先手を奪った馬は1頭もいない組み合わせである。先行策を取った馬も少ない。

 この多頭数で、今週から「Bコース」である。できればコースロスを避け、芝状態も悪くないはずのインに突っ込みたい。だが、スローに近いペースだとだれもバテたりしないから、馬群の密集するインでスペースを探し、能力全開の切れ味を発揮するのはそれこそ大変である。ハイペースになりそうもないことは先刻承知でも、終わって脚を余した陣営から、禁句の「流れてくれなかった」。無意味な敗因が語られそうである。

 先行する可能性のあるサトノルパン(父ディープインパクト)から入りたい。出遅れ癖が残るため、後方からのレースが多いが、前回は珍しく先行して2着。  この距離1400mは【2-1-1-0】。東京の1400-1600mをベストとする6歳クラレント(父ダンスインザダーク)の下。C.ルメール騎手はフランス育ちだから、好位のインキープから抜け出してくるのが騎乗の流儀でもあり、出負けさえしなければ、行く馬は少ないから、得意の好位差しの形が取れそうである。  同じようなタイプのダイワマッジョーレサクラゴスペル。追い込み鋭いダンスディレクター本線だが、穴馬は、田辺騎手なら思い切って行くかもしれないバクシンテイオーか。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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