2015年06月11日(木) 12:00
実際、急がなくて成功した安田記念のモーリスを目の前にして、色々と思うことが沢山あった。ダービーに続きGI連覇、全国リーディング首位を走る堀調教師にとって面目躍如の勝利だが、ここに至る道のりは並大抵ではなかった。関西から美浦の堀きゅう舎に転厩し、今年1000万条件から再スタート、4連勝でマイルの頂点に立ったのだが、トレーニングセール出身のモーリスは若い頃の無理がたたっていたのか、昨秋転きゅうしてきたときは体の痛みが取れなくて全てが手探りだったと言う。無理はさせられない、調教をするにも常に体調と相談しながら「のんびり落ち着いて」の呼吸を大切に仕上げられ、再始動した一月から連勝を重ねてきたのだった。ゲートの出がよくないという弱点を、最後のひとハロン10秒9の切れ味でカバーして勝ったダービー卿チャレンジTが高く評価され、晩成型スクリーンヒーロー産駒の勢いという見方で人気になった。
一年ぶりに手綱を取った川田騎手は、あらかじめそれを予感していたようだが、堀調教師はゲートをしっかり出して競馬をさせるべく、前走からの2カ月という期間をゲート内で駐立をくり返すなど、ローテーションに気を使いながらも準備を重ねていた。GI未経験、東京未勝利という現実にとらわれず、モーリスを勝たせる努力を続ける様子は「のんびり落ち着いて」いて、まるで「知らず知らず、いつの間にか身についていた」という風に、安田記念を勝ってみせたのだった。スタートは改善され、レースは3番手をスムーズに追走。持久力を発揮することでさらなる可能性をも感じさせていた。
「知らず知らず、いつの間にか身についていた」、本物の教育とはこういうものではないか。早く学んだことは早く忘れる。しっかりと「身につける」にはどうすべきか、そこまで考えさせてくれた。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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