社台グループが認定厩舎に参入

2004年06月08日(火) 20:51

 このほど6月3日付けで、社台グループがホッカイドウ競馬の認定厩舎制度へ参入することが決定した。

 昨年度からスタートしたホッカイドウ競馬の認定厩舎制度は、実質的な外厩制度とも言うべき画期的な試みで、その「認定第一号」となったコスモバルクが皐月賞、日本ダービーへと駒を進め善戦したのは周知の通りである。

 当初はコスモバルクを育てた岡田繁幸氏も「田部調教師に行き着くまで6人の調教師に断られた」と雑誌の対談で語っているように、競馬場内の厩舎サイドにはなかなか理解を得られない制度だったようだが、コスモバルクの活躍により、一気に認定厩舎制度を受け入れる調教師が増えた。認定競走を勝ち上がり、中央競馬への出走が可能になると、賞金獲得高もホッカイドウ競馬とは比較にならないほどの巨額なものになる。現場の調教師は、いわば「名義貸し」に等しい状態で、高い中央の賞金(進上金)にありつけるのだから、まさに「いいことずくめ」なのだが、制度を受け入れるまでにかなりの抵抗があったようだ。その理由は何か?やはり「厩舎村の秩序が乱れる」というような心理なのだろうか?

 しかし、コスモバルクの大活躍に刺激されて、その後は認定厩舎が続々と誕生した。ビッグレッドファームに続いて、第二号に「帯広軽種馬トレーニングセンター門別分場」(16馬房)、第三号に「ダイヤモンドファーム(浦河)」(2馬房)、その後も今年に入って、「地興牧場(浦河)」(11馬房)、「天羽禮治牧場(門別)」(10馬房)、と続き、このほど社台グループが一気に36馬房(社台ファーム20馬房、ノーザンファーム16馬房)を認定厩舎として申請・認可されたのである。

 社台グループの発行する月刊誌「サラブレッド」5月号によれば、社台ファームの方は今年の予定として「牡と牝それぞれ5頭ずつの2歳馬の利用」からスタートするとのこと。マックホープの02(牡、父ラムタラ)、バッフドオレンジの02(牡、父タヤスツヨシ)、ゴールドリーフの02(牝、父フレンチデピュティ)、メローフルーツの02(牝、父サクラバクシンオー)、グレースアサシーの02(牡、父エリシオ)の名前が認定厩舎用の候補として挙がっている。

 また、すでにホッカイドウ競馬の内厩(門別トレセン)に入っているチャッターボックスの02(牝、父エアジハード)、レディゴシップの02(牝、父フレンチデピュティ)、サムシングブルーの02(牝、父エアジハード)などは、「今後、認定厩舎を利用してのレース出走になる予定」だという。

 そしてもう一方のノーザンファームは、「現時点では古馬3頭程度の利用からスタート」の予定とのこと。「中央で芽が出なかった馬を地方で再生して、再度中央へ送り込む」ためにも認定厩舎を有効に使いたい意向のようだ。

 社台グループの参入により、ホッカイドウ競馬の認定厩舎は今後もさらに増えつづけることだろう。当日輸送で競馬場へ直接入厩させられるメリットを利用し、まずはホッカイドウ競馬の認定レースを勝ち上がり、次に目指すのは中央での特指レースである。もちろん成績如何では重賞やクラシックも視野に入ってくる。コスモバルクの空けた風穴が、従来の内厩制度に大きな変革をもたらすことになったのだ。

 ところで、余談だが、進上金の配分を巡って、まだ私にはよく理解できないところがある。例えば、認定厩舎から出走してレースに勝った場合、調教師(ホッカイドウ競馬の)が10%、騎手が5%なのは当然として、厩務員の取り分(5%)は認定厩舎所属厩務員のものになるのだろうか。レースの格が上がれば上がるほど賞金は大きくなるので、ここは内厩の人々にとっても認定厩舎の人々にとっても無視できない部分だろう。また、レース当日、パドックで引き馬を担当するのはどちらの厩務員なのか、ということも気になる。(コスモバルクの場合は田部厩舎の厩務員が担当していたが・・・)。

 そしてもう一つは、この認定厩舎制度が、他の地方競馬にも波及して行くのかどうかも気になるところだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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