さすがの総合力の勝利/スプリンターズS

2015年10月05日(月) 18:01


きわめて特殊な流れの中山1200m

 混戦がささやかれた今年、展開されたのはきわめて特殊な流れの中山1200mだった。

 中山1200mは前半が下り坂のほぼ直線に近いため、前傾ラップがくずれることはない。まったく行く馬のいない、非常にレベルの低い下級条件で何年かに1-2回出現するくらいである。

 ところが、前半3ハロンのダッシュ記録「32秒5」を持つハクサンムーンが「なにがあっても行く」と宣言していた今年、たしかにハクサンムーンは少し出負けしながら一気に先手を奪ったが、刻まれた前半の600mは「34秒1」。後半が「34秒0」。合わせて1分08秒1だった。

 スプリンターズSがG1になった1990年以降、中山で行われた24回のうち、前半3ハロンがもっとも遅かったのは、不良馬場で全体時計が1分09秒9に落ち込んだカルストンライトオの年の「33秒6」と、珍しく緩い流れでスリープレスナイトが勝った08年の「33秒6」。この2回の33秒6であり、前半3ハロン「32秒台」が過半数を占めている。

 後半3ハロンより前半3ハロンのほうが遅かったのは、G1のスプリンターズS史上はじめてのことである(おそらく格付け以前にもないはずである)。歴史的なスローだった。

 なぜこんな特殊なペースが出現し、時計勝負ではない中、長距離戦ならともかく、頂点のスプリントレースが前週や、同日の条件戦より遅い時計の決着になってしまったのか。

 なにがなんでも行くと宣言したハクサンムーンが出負けしながら猛然とハナに立った。アクティブミノルが譲り、好スタートのミッキーアイルも下げた。ところが、ハクサンムーンは3ハロン目にG1ではありえない突然ペースダウンの「11秒7」。ふつうなら「10秒台」の地点で極端にラップを落としたから、先行グループの騎手のスピード感覚は完全にマヒしてしまっていた。人気のミッキーアイルも、アクティブミノルも、突然の未勝利戦以下のペースなのに手綱を絞ってスピードを落とそうとしている。どこかに錯覚が生じたのだろう。

 前半3ハロン34秒1ではあまりにも遅すぎて・・・

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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