「これからの成長が楽しみ」アスカビレンの中沢助手にインタビュー

2015年10月20日(火) 18:00

競馬の職人

アスカビレン


中沢助手「白菊賞を勝ってくれた時からこの馬すごい馬かも…と思いましたね」

 ミッキークイーン号、秋華賞制覇おめでとうございます。1分56秒9のレースレコードでオークスに続く2冠達成!

 2着のクイーンズリングの追い込みを首差しのぐ好騎乗を見せた浜中騎手は昨年のショウナンパンドラに続く連覇。ハイペースを想定した積極的な騎乗が見事はまりましたね。浜中騎手渾身のステッキワークが冴え、思いっきりのいい騎乗が生んだ勝利の瞬間、見事だと思いました。

 また池江厩舎のチーム力は素晴らしいと感じました。斎藤助手がデビュー時からかかわっていたそうですが、ローズS後に怪我をしてしまい中沢助手にバトンタッチして今回のレースに臨みました。きっちり仕上げることができて、送り出せてうれしいと言っていたそうですよ。この勝利の裏には、桜花賞に出られなかった悔しさや担当助手の怪我などがあってより一層の思い入れがあったでしょうね。

 桜花賞馬レッツゴードンキやローズS優勝馬タッチングスピーチなどの有力馬がいる中で秋華賞に駒を進めた中尾秀正厩舎のアスカビレンに注目し取材させていただきました。担当の中沢助手に話をお聞きしました。(10月14日取材秋華賞前にお届けできなくて残念でした…)

 秋華賞のゲートが開いた瞬間、他馬にぶつかったかと思いヒヤッとしました。でも道中ミッキークイーンを見ながらスムーズに運び、アンドリエッテが動いたのをみてその後ろから動いていきました。ミッキークイーンに半馬身差まで詰め寄る場面もあり、一瞬『勝てる』と思いましたが残り1ハロン過ぎてから脚が止まってしまい後続の馬に交わされてしまいました。かなりの瞬発力を使ってよく伸びていましたし、池添騎手の勝負根性を十分みせてくれました。展開が悪かったのか距離が少し長いのかもしれませんね。次走が楽しみなレースをしてくれました。

常石 新馬から担当しているんですか?どんな印象でしたか?

中沢 おとなしくて扱いやすい馬でしたよ。飼い葉もよく食べるんですよ。牝馬としてよいことだと思います。今はパドックではイレ込みがきつくうるさくなるんですよ。騎手が乗ると余計にうるさくなるんですよね。レースになるとおとなしくなるようです。競馬がわかるんでしょう。

常石 秋華賞では池添騎手が乗るんですね。その辺は上手い騎手だから大丈夫でしょう。オルフェーヴルのような気性の荒い馬に跨っていましたからね。

中沢 今はとっても具合がいいので飼い葉も食べた分だけしっかり身について体重も増えています。成長分なので増えても問題ないです。この気性の荒さがレースに行ってよい勝負根性になっているんでしょう。毛づやもよく、つやつやして綺麗ですよ。

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馬房でのアスカビレン

常石 馬の手入れがきれいだったら賞をもらえますよね。

中沢 遊びがなくシッカリ走って白菊賞を勝ってくれた時からこの馬すごい馬かも…と思いましたね。まだまだこれからの成長が楽しみです。

常石 前走の夕月特別は強い勝ち方をしましたね。

中沢 入れ込みがきついのにこのレースは、落ち着いていましたね。浜中騎手が上手くなだめてくれたんだと思います。乗りやすくどんなレースでも行けそうですねと浜中騎手に言っていただいたのでレースの幅が出ると思います。

常石 浜中騎手は秋華賞ではライバルですね。パドックでは少し入れ込んで発汗していましたがレースでは3番手でゆっくり運べ、直線で追われるときっちり反応し後続に2馬身差をつけて強い競馬をしましたね。

中沢 ありがとうございます。前走(有松特別)では直線で不利があったのでまともに走っていれば1000万でも力は違うと思っていました。

常石 最後いい脚をつかってくれるから楽しみが出てきますよね。

中沢 最終追切では、軽くさっと気合をつけるくらいですっと伸びてくれたのでフットワークのコンディションもいい感じですね。

常石 新馬から面倒を見ている馬とGIレースに出られるのは楽しみですよね。

中沢 そうですね。楽しみにしたいです。

常石 応援しています。ありがとうございました。

***

 アスカビレンを管理している中尾先生にも話を伺ってきました。

常石 秋華賞への意気込みを教えてください。

中尾 僕が走るんじゃないからね(笑)。牝馬だけど乗るのにはとっても素直で乗り易い。よくここまで来てくれたと思う。厩舎の看板馬に育ってほしいね。

常石 秋華賞は、品のよい牝馬レースのような感じがして僕の大好きなレースです。前走から中2週のレースですね。調子はどうですか?

中尾 前走の1000万はいい形で勝つことができましたね。スタートもよく折り合ってくれたし最後までしっかり走ってくれたらいい結果につながると思う。春の実績馬もGI馬もいるしトライアル組も強い馬たちがそろうので胸を借りるつもりで頑張ります。平常心で臨みたいですね。そういえばつねちゃんもこのレース出ましたね。馬は何だったかな?

常石 オースミコスモです。やっぱりうれしかったですね。何度出てもワクワクします。

中尾 そうだったね。コスモの仔ももう少し走れるようになったらいいんだけどな。

常石 GI競走に出走させられる馬が厩舎にいるというのは厩舎全体が盛り上がって活気がでてきますよね。楽しみにしています。ありがとうございました。

  ☆彡
 実は秋華賞をライブで見ることができずとっても残念でした。録画を何度も何度も見ましたがすごいレースでしたね。京都競馬場で見たかったわ。記録もいっぱい出ましたね。池江厩舎はこれで重賞51勝目。すごい記録です。改めておめでとうございます。

 第23回全国障害者馬場馬術大会が三木ホースランドパークで10月16・17・18日と行われ参加してきました。僕はこの大会に4年前から参加しています。落馬事故があっても馬に乗りたい気持ちは頭からも体からも離れませんでした。高次脳機能障害というちょっと厄介な障害で記憶や左半側空間無視・遂行障害・麻痺などの症状があります。

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乗馬大会の主審のニック・ロジャース氏とチーフスチュワートのアマンダ・ヒース氏

 このコラムで取材させていただいた厩務員や助手・関係者の方々に名前を何回聞いても覚えられなかったり何度会っても何回も『おはようございます』とあいさつしたりして『もう3回目やで』と笑われたりしています。

 でもやっぱり僕は馬が好きです。トレセンに来ると心が豊かになってうれしいです。いろんな方に迷惑もかけたり応援してもらって助かります。ありがとうございます(ぺこり)。

 こんな調子ですがこれからもよろしくお願いします。ちょっとでも覚えるように頑張ります。そして馬に乗ることができ大会に参加することができるのは最高にうれしいです。生きててよかった。「生きてるだけで丸儲け」と思う瞬間です。

 経路はノービステストとチームテストの2種類ですがなかなか覚えられず悪戦苦闘しながら挑戦です。毎朝、経路図を書いて特訓中でもなかなかうまくいかずときどき母から大っきな雷がおちています。2つの経路をクリアすればフリースタイル競技もあります(曲に合わせ馬の動きを表現する)。

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パートナーと一緒にパチリ

 昨年まではなかなか取れなかったポイント60%越えなんですが、今年の大会で65.488%と60.287%を出すことができ優勝しました。やったー!最高やーうれしかった。でも世界レベルはまだまだ上です。チームテストは55.295%で2位でめちゃめちゃ悔しかったです。11月3日に小さな大会があるのでリベンジしたいと思います。

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大会後メダルをかみながら記念撮影

 今の気持ちは『目指せ2020年東京パラリンピック』です。そのためには、来年春から海外での大会に参加し経験を多くして大会に慣れポイントも加算していく必要があります。やれるかな? 言葉も通じないし不安がありますが是非行きたいと思っています。チャレンジです。日本では、大会の数が少なくまだまだ未開発な領域です。競馬は毎週行われています。同じ馬の競技ですが乗馬の大会は1年に2回くらいしかありません。イギリスではほぼ毎日どこかの地域で障害者乗馬大会が行われているそうです。どんどんチャレンジして2020東京パラリンピックに行くぞー! の気持ちで週1回、明石乗馬協会へ2時間30分かかって通っています。

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明石乗馬協会の仲間達と記念撮影

 皆さんの応援が僕のパワーになり、馬と出会うことが僕のエネルギーです。つねかつこと常石勝義でした。

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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