2015年11月12日(木) 12:00
これは、一頭の馬と人との関係にも見ることが出来る。もちろん全てにわたってではないが、たまたまでも、その人馬にかけがえのないもの、通い合うまごころを感じたときには、無条件で応援したくなるものだ。古馬になってからの秋、果実のように実りをみせる馬は多いが、そこにひとりの人間が関っていたとしたら、もう十分に気を引く。
アルゼンチン共和国杯を一番人気で勝ったゴールドアクターと吉田隼人騎手には、そうした人の思いを引き寄せるものがあった。開業10年目で初めて重賞を勝った中川調教師は「この馬のことを分かっている隼人くんがずっと乗っているから」と言い、吉田騎手は「この馬への思いは強いし、最後は人馬の信頼で届いたと思います」と語っていたが、どの言葉にも、他に対する思いがあふれていて、とても爽やかだった。初めて騎乗したのが未勝利時代の調教だというから、正にゴールドアクターの成長とともに歩んできたことになる。
レースでコンビを組んでからこれで6戦5勝、たった一度の敗戦が菊花賞の3着だから、吉田騎手のこの馬への思いは大きい。最初はズブかった馬が、自ら出て行けるようになり、反応が良くなっていって今日があるということだが、3番手で折り合い、左ステッキに応えていい脚をくり出す戦いぶりは頼もしい。確実に強味を増してきた源には、この馬に寄せるスタッフの信念も感じられた。
デビューから一貫して二千米以上のレースを戦ってきたこと、無理をさせず大事に使ってきたこと、人馬の絆はこうして築かれてきた。筋を通し、信義に篤くのまごころが、見事、花開かせたのだ。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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