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ヨーロッパで沸き起こっている女性騎手を巡る興味深い議論

2016年03月16日(水) 12:00



ことの発端は、メルボルンCを女性騎手ミシェル・ペインが優勝した昨年11月にさかのぼる

 JRAで16年ぶりに誕生した女性新人騎手の藤田菜七子騎手が何かと話題となっているが、奇しくもこれに時期を合わせるようにして、ヨーロッパで女性騎手を巡る興味深い議論が沸き起こっている。

 ことの発端は、豪州のフレミントンで行われたG1メルボルンC(芝3200m)を、女性騎手ミシェル・ペインが騎乗するプリンスオヴペンザンスが優勝した、昨年11月にさかのぼる。

 この時、障害リーディングの座に就くこと20回という大記録を残して昨年現役を退いた、不世出の名騎手アンソニー・マッコイが、155回の歴史を誇るメルボルンC史上で初めての女性勝利騎手による優勝を果たしたペイン騎手をおおいに讃えた上で、提言をしたのである。いわく、「牝馬に負担重量のアロウワンスがあるように、女性騎手にも負担重量の恩恵があって良いのではないか」と。

 提案の論旨は、下記の通りである。

「フィジカル面での強さを求められるのが、レース騎乗である。そして、女性が男性に比べてフィジカルで劣るのは、致し方のない事実だ」

「極めて高い技術をもった女性騎手でも、ゴール前での追い比べになると、力強さという点で男性に負けてしまう」

「男女が混合で戦うスポーツ競技は、他にあまり例がない。それは、男性と女性にはフィジカルの差があるからだ」

 だからこそ、牡馬と戦う際の牝馬に斤量面での恩恵があるように、男性騎手と戦う女性騎手にも、斤量面での恩恵があってもよいのではないか、との私見を述べたのだった。

 なるほど、と思わせる論旨である。騎乗馬を速く走らせるという命題を果たす上で、「力」というファクターがどれほどの比重を占めるものなのか、一概に定義することは難しかろう。だが、だからこそ、長年にわたって最前線で騎乗してきた人物の、「レース騎乗にはフィジカルが求められる」という言葉には、重みがある。

 マッコイの提言は、おおいなる議論を巻き起こした。

 その通りであると肯定する意見も多かったが、そんな中、現役で騎乗している女性騎手の多くが、「そんなモノは必要ないわ。私たちは男性と同じルールで結構」という立場をとったのは、興味深い反応だった。

 現行のルールの中で男性と戦っている、女性たちのプライドもあろう。また、男性騎手だけでなく女性騎手にも体重調整で苦労している人は多く、男性よりも軽い斤量を設定されれば、それだけ減量がきつくなるという点も、考慮しなくてはならない重要な側面である。

 そんな中、ここへきて議論が再沸騰しているのは、ヨーロッパの競馬主催者の中から、マッコイに賛同する意見が出てきたからである。

 サポートを表明したのは、フランスにおける統括団体「フランスギャロ」の会長職にある、エデュアール・ド・ロトシルト(ロスチャイルド)だった。

「現在、女性騎手の活躍の場は限定されている。男性と戦う上で、どれだけの斤量差をつければ、どれだけ彼女たちの成績が上がるのか、具体的な検討に入る必要があるのではないか」との考えを表明したのである。

 ロトシルトといえば、前回会長職にあった時代に「女性騎手限定戦」の導入を決めた人物である。更に昨年7月、ヴィシー競馬場で行われたG2ヴィシー大賞で、女性騎手アメリー・フーロンがエリプティークに騎乗して優勝。フランス競馬史上初めてとなる、女性騎手による重賞競走制覇を果たすという快挙が達成されたが、エリプティークのオーナーブリーダーは、他ならぬロトシルト会長であった。

 すなわち、常日頃から女性騎手のサポートに熱心な人物なのである。

 これを受け、フランス騎手会のジャッキー・リクー理事長は、馬主、調教師、騎手など、全ての関係者がテーブルについて、話し合うべき問題としながらも、500勝近い勝ち星を挙げている現役の女性騎手ナタリー・デスーテルの名を挙げ、「現行のルールで男性と互角にやっている騎手がいるのに、果たして斤量差は必要なのか」と、異論を提起。その上で、女性騎手の騎乗機会が限られているとしたら、「それは、馬主や調教師の意識の問題ではないだろうか」と、私見を述べている。

 JRAにとっても、女性騎手へのアロウワンスは、少なくとも検証はされてしかるべき命題と言えそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。<br>

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