大事なのはレース体系

2016年03月26日(土) 12:00


まずは高松宮記念のデータ予想から

 今週は高松宮記念。日本の野球界には「春はセンバツから」という言葉がありますが、それにならえば「春のG1は高松宮から」ってことになるんでしょうね。これから6月第1週まで、4月第1、第4週を除いて、G1レースが相次いで行われます。競馬の春を楽しみましょう。

 高松宮記念は、ディフェンディングチャンピオンのエアロヴェロシティが回避。日本馬だけの争いになりました。過去10年でG1未経験馬が1〜3着に来たのは5例だけ。ビッグアーサーにとっては厳しいデータです。

 また、このレースが3月最終週に組まれるようになった2000年以降去年まで、16年連続で少なくとも1頭は前走阪急杯組が3着以内に来ています。その内訳は、勝ち馬が8頭、2着馬が6頭、3着馬が3頭、5着馬が2頭、4、7、9着馬が1頭ずつで、阪急杯2ケタ着順から来た馬はいません。この2つのデータから考えると、ミッキーアイルが最有力、穴ならレッツゴードンキかな、と思うんですけど…。

 さて先日、「JRAが大阪杯のG1昇格を検討中」というニュースが伝えられました。そのとたんに、当サイトにもいろいろな意見が寄せられています。それを読むと、どうも「喜ばしいこと」と受け止めている方は少ないような気がするのですが、いかがでしょう?

 そもそも、大阪杯をG1に昇格させる理由は、「中距離を得意とする古馬にとって、上半期は最後の宝塚記念以外に適鞍となるGIがないのが現状で、近年はドバイや香港など、春に海外遠征を行うケースが増加していた」(netkeibaニュース)から、だそうです。それって、日本馬の“海外流失”に待ったをかけるため、ということですか?

 だとすれば、ちょっと違和感を感じます。今年秋以降、海外競馬の馬券発売が開始されるんですよね?発売対象となるレースには、ドバイや香港のレースも含まれているわけで、そこに日本の有力馬が遠征していけば、そのレースに対する関心が高まり、馬券が売れるんじゃないか、と思うのです。

「いやいや、海外競馬の馬券は大した売上にはならない。日本を代表する馬たちが国内のG1に出てくれれば、もっと馬券が売れるはず」。「海外に行く馬はわずか。それ以外の馬もたくさんいるのだから、それらの目標になるG1を作ってもいいだろう」。確かに、それはそうかもしれません。だからといって、わざわざこの時期に海外ビックレースの向こうを張るようなG1を開催する必要はあるのでしょうか?極端なことをいえば、このままの日程で大阪杯をG1に昇格させるのは、凱旋門賞と同じ10月第1日曜日に芝2000〜2400メートルのG1を新設するようなもの、じゃないですか?

 競馬で大事なのはレース体系です。大阪杯をG1にするなら、その開催時期をいつにするかも合わせて検討するべきでしょう。G1のない週に組まれているG2をただ単に昇格させるだけ、では済まない話だと思うのですが。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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