良馬場で考えられた通りの勝ち時計/天皇賞・春

2016年05月02日(月) 18:00


1番枠の利をフルに生かした武豊

「スタートを切ってすぐ、行こうと思った」と武豊騎手が振り返るように、決して早くから先手を主張する作戦ではなかったと思えるが、キタサンブラック(父ブラックタイド)の仕上がりは素晴らしかった。いつも良く見せるタイプだが、それにしても気力あふれる今回のキタサンブラックの気配の良さは、他を圧するほどだった。パドックや返し馬で他馬の気配を見渡した武豊騎手は、その時点で「先手を奪ってレースを作ろう」とする気迫のライバルはいないこと、また、落ち着きを欠くどころか尻っぱねまで繰り返す1番人気のゴールドアクターが、3200mでの折り合いを考えれば、有馬記念と同じような気合をつけたスタートは切れないことを見抜いた。

 自分で主導権をにぎることになった武豊は、これまで3200mの天皇賞・春の成績【6-6-4-7】。ずば抜けた実績をもつが、今回のように自ら主導権を主張したことはない。なぜなら、終始きびしいマークを受けて3200mを乗り切るのは、途中でリズムを崩される危険が大きいからである。だが、今回はプレッシャーをかけてくる伏兵やライバルが少なく、直前のライバルの動向を見ているうちに、スタートさえ決まれば1番枠の利をフルに生かしたほうが有利に展開することを察知してしまったのである。

 実際、直線の残り1ハロンまで2番手以下は終始「1-2馬身」後方にいて、キタサンブラックは一度も後続からプレシャーを受ける場面がなかった。ずっと単騎マイペースである。こうなれば、3200mの春の天皇賞に23回も乗って12回も連対している武豊の体内時計は正確なリズムを刻みつづける・・・

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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