【女性騎手対談】藤田菜七子×赤見千尋(2)『あぁーっ、巧也君にやられた!!』

2016年05月09日(月) 12:01

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▲緊張の初騎乗から、自身も周りも待ち望んだ初勝利まで、赤裸々な思いを語ります

前回の○×トークに続いて、いよいよ赤見さんとの女性騎手対談へと入っていきます。デビューから2か月、どこにいても注目の的の菜七子騎手。ハプニングが起きた初騎乗から、自身も周りも待ち望んだ初勝利まで、赤裸々な思いを語ります。(取材:赤見千尋)


(前回のつづき)

前に馬がいない これが“1着”なんだ

赤見 デビューから2か月、怒涛だったんじゃないですか?

菜七子 本当に、怒涛の毎日でした。競馬にもたくさん乗せていただいて、あっという間に過ぎて行った2か月でしたね。

赤見 競馬学校にいる頃に「デビューしたらこういう感じかな?」って想像したと思うんですけど、想像と現実はどうですか?

菜七子 全然違いました。こんなに乗せてもらえると思ってなかったですし、こんなに注目していただけるとも思っていなかったので。本当にありがたいなっていうのが、率直な感想です。

赤見 競馬メディアだけでなく、テレビや一般紙でもたくさん取り上げられてますもんね。

菜七子 それは本当に、今でもびっくりしてるんです…。全然大した人間ではないのに、こんなに取り上げてもらって。自分でもちょっと怖いくらいです(苦笑)。

赤見 そんなそんな。周りの友達も驚いてるんじゃないですか?

菜七子 そうみたいです(笑)。デビューした時は「すごいね」とか「おめでとう」っていう言葉をたくさんもらいましたし、ニュースを見て久々に連絡をくれた友達もいました。友達は、今年大学生になった子ばかりなんですけど、時間を作って一緒に遊びに行ったりもします。

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▲周りの友達は大学生、自身は一歩先に社会人に。それでも、今でも変わらずに遊びに行く仲だという

赤見 そういうのは大事ですよね。デビューのお話から聞きたいんですが、JRAの前に、3月3日に川崎競馬でデビュー。「女の子だからひな祭りに」という、根本調教師の温かいサプライズでしたね。

菜七子 はい。根本先生はいつも、わたしのためにいろいろ考えてくださいます。同期のみんなより先にデビューできるというのも、嬉しかったですね。やっぱり負けたくないので。「みんなより先に勝てるように頑張ろう!」って思いました。

赤見 デビューを前にどんな心構えでしたか?

菜七子 一番思ったのは「周りの人への感謝を忘れないように」ということ。自分が騎手になるまでに、たくさんの方に支えてもらいました。そのことを忘れずに一鞍一鞍を大切に乗っていきたいなって、改めて思いましたし、今でもそれは思っています。

赤見 川崎のコースはコーナーがきついですが、そのあたりの不安はなかったですか?

菜七子 コースもですし、何もかもが初めてなので、不安ばかりでした。でも、川崎競馬の関係者の方がとても優しかったですし、ジョッキーのみなさんも親切に教えてくださったので、いざレースに向かったらもう大丈夫でした。ただ、一度ゲートに入ったのに出されちゃって、それにちょっとびっくりしてしまって。

赤見 ゲートイン後に競走除外になった馬がいて、仕切り直したんですよね。デビュー戦からすごい経験をしましたね。

菜七子 厩務員さんに「こういうこと、よくあるんですか?」って聞いちゃいました。そうしたら「いや、あんまりないよ」って(笑)。最初にゲートに入った時は緊張したんですけど、それがあったことで逆に何とも思わなくなって、緊張は解けましたね。

赤見 あの時に騎乗したコンバットダイヤ、「菜七子」って書いてある可愛いメンコをつけてましたね!

菜七子 あれは、工藤先生(浦和)が準備してくださったんです。レースの後にそのままいただいて、部屋に大事に飾ってあります。

赤見 そして、2日後の5日にJRAデビュー。初戦は根本厩舎の馬で、いきなり2着に!

菜七子 追い切りにも乗せてもらって、「とてもいい動きをするな」って思ってたんです。厩務員さんも「とても調子がいいよ」とおっしゃってたので、期待してましたし、「頑張ってくれ!」という思いでレースに臨みました。

赤見 直線がすごい伸び脚で、スタンドからも大声援でした。それから、レース毎に初勝利への期待が高まっていったわけですが、その時が来たのは3月24日の浦和競馬。2番人気の馬で、逃げ切り勝ちでしたね。

菜七子 ゴールの時、前にほかの馬がいなかったので「あぁ、これが1着なんだな」って。本当に嬉しかったですし、同期からも「おめでとう」っていう言葉をかけてもらいました。

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▲浦和競馬での初勝利、2番人気のアスキーコードで逃げ切り勝ち(撮影:武田明彦)

赤見 しかも、その日のうちに2勝目を。連勝でしたね。

菜七子 この時は、厩務員さんに「絶対に力はあるから! この馬を信じて頑張って」って言ってもらって、「よし! 頑張ろう」という気持ちでレースに出たんです。そうしたら本当に頑張ってくれました!

赤見 初勝利の時とは一転、今度は差し切り勝ち。その前の川崎や高知では、馬なりで行って最後に伸びてくる感じだったのが、浦和では出して行ったじゃないですか。その辺は意識してたんですか?

菜七子 浦和の時は、なるべく前のポジションを取りたいなと思ってました。結果的には思ってたより後ろになってしまったんですけど、馬がしっかり我慢することができて、最後の脚につながってくれました。

赤見 JRAや地方、いろいろな競馬場で乗ってきたことが経験になり、実になってるという感じでしたか?

菜七子 まだまだ何も出来ていないんですけど、初めての競馬場で知らない馬に乗ることが多くて、そういう中でみなさんが本当に優しくて。「こういう馬だから、ここは気を付けた方がいい」って教えてくださって、そういう経験が増えて、少しずつですが成長できているのかなと思っています。

赤見 そして、4月10日についにJRA初勝利。51戦目でした。ここに至るまでには葛藤もあったのかなって。

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▲待望のJRA初勝利は、福島・500万下・ダ1150m、2番人気のサニーデイズで

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▲レース後、勝利をかみしめる藤田菜七子騎手

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▲兄弟子、同期と記念撮影(向かって左から野中騎手、丸山騎手、坂井騎手)

菜七子 そうですね…2着が何回かあって。自分の技術不足だなって思うこともたくさんありました。同期もどんどん勝っていきましたし、このままだと勝てないんじゃないかなって思うことも…。

赤見 同期の一番乗りは、3月27日の木幡巧也騎手。続いて4月2日に坂井瑠星騎手、10日に荻野極騎手が勝ちました。

菜七子 巧也君の初勝利の時は私も中山で乗っていて、次のレースに乗る準備をしながらモニターで見ていたんです。「あぁ〜っ! やられた」って思いました(苦笑)。2勝目の時は一緒のレースに乗ってたので、「あぁ、巧也君が1着だ」って後ろから見てました。

赤見 同期のことは、やっぱり意識しますよね。

菜七子 もちろん意識します。自分も負けていられないなと思って、いろいろな先輩ジョッキーに「こういうときはどうしたらいいんですか?」って聞いて、教えていただきました。

赤見 その思いが実ったのが、10日の福島。2番人気のサニーデイズに騎乗しての勝利でしたね。やっぱり、込み上げてくるものがありましたか?

菜七子 ありましたね。「あぁ…、やっと勝てた」という思いと、馬が人気あったので「結果を出せてよかった」という思いでいっぱいでした。ホッとしたっていう気持ちが一番強かったですね。

(次回へつづく)


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※受付は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

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東奈緒美・赤見千尋

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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