芝を読んだコース取りと一気の猛スパート/安田記念

2016年06月06日(月) 18:00


田辺裕信騎手の痛快な騎乗

 マイルのGI「5連勝」に挑んだモーリス(父スクリーンヒーロー)を倒したのは、2013年の皐月賞以来「16連敗」中のロゴタイプ(父ローエングリン)だった。皐月賞以来、実に約3年2ヶ月ぶりの勝ち星である。  前走、58キロのハンデ頭だったダービー卿CTをクビ差2着時には、57キロの3着サトノアラジンに1馬身以上の差をつけているから、決して「終わっていた」わけではないが、今回はモーリスを筆頭に強敵ぞろい。そのあと快走したサトノアラジンが3番人気の評価を受けたのに、ロゴタイプは8番人気。東京コースでは追って甘い印象も重なっていた。

 だが、1週前のハードな調教でもう「仕上がっているから」と、直前の追い切りを「71秒5-55秒8-40秒6-14秒3馬なり」にとどめたのは田辺裕信騎手(32)。なにも行かずに、「行けたらハナを切りたい」と提案したのも田辺騎手。機先を制して先手を奪ったあと、前後半「47秒0-46秒0」=1分33秒0のペースを作ったのも、ジョッキー田辺。

 もちろん、苦心の仕上げで復活劇を可能な状態に仕上げた田中剛調教師以下のスタッフ、さらには再鍛錬先の牧場スタッフの時間をかけた努力のほうが大きいのだが、この快走は、田辺騎手の痛快な騎乗によるところ99%である。ロゴタイプの父ローエングリンは、4歳時に「マイラーズC」と「中山記念」を制し、だいぶたった6歳時にもう一回マイラーズCを勝ち、忘れたころの8歳時に、2度目の中山記念を勝っている。そういう父子ということか。

 前半35秒0-47秒0のスローに落としたのに、だれもプレッシャーをかけてこないから、さらに12秒1と楽をさせて前半1000m通過はなんと「59秒1」の超スロー。と、4コーナーを回って突然、猛スパートをかけたのは先頭のロゴタイプ(田辺)だった。いきなり「11秒3-10秒9→」である。この日インを衝いた馬は伸びなかった。でも、午後から良馬場に回復した芝は、みんなインは避けたが、「乾き始めるとインから急速に良くなるのが東京芝コースである」。ただ1頭だけ内ラチ沿いに進路を取って猛スパートをかけたのが田辺騎手だった・・・

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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